あれから数日。
寝袋はスタッフバッグから出され、一度試し寝をした後、袋には戻さずに保管していた。ダウンの寝袋はそのロフトを損なわないように、スタッフバッグには収納しないで保管した方がいいからだ。僕はいつもそうしているし、だからこいつもそうした。それはもちろん問題ないし、むしろ優良な方だと思う。
本当の問題はそこからだった。
ある朝ふと思い立って、寝袋をしまってみようと思った。練習、というほどでもないが、何事も実践することは大切だ。
何気なくスタッフバッグに寝袋を仕舞いはじめる。足先から無造作に、詰め込み方式でいくのが僕のやり方だ。いつものやり方でいつものようにやった。出だしは好調だった。しかし半分くらい収まったところですでに雲行きが怪しかった。
おいおい、このままで全部入るのかよ？
そう思わずにはいられなかった。明らかにスタッフバックの残量と寝袋の体積は釣り合っていなかった。奇跡でも起きなければもう無理っぽかった。
でも、それでも僕は詰め込むことを止めなかった。必死だったのかもしれないし、ただ現状を受け入れたくなかっただけかもしれない。
結局、奇跡なんて起きなかった。
なんとか閉め口のひもをしばった。だけど収まりきらなかった寝袋の一部が、しばった口からコンニチワをしていた。僕の目の前には、くの字に力なく横たわる見るも無残なそれがあった。
なんだよこれ。どういうことだよ。こんなんじゃとてもダブルバインドなんて出来ないよ。
ふぅ、と僕も力ないため息をついた。
コンプレッションバッグ買うかな？
イスカのやつ。
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