2012年2月17日金曜日

カリブ海の宝石 vol.6

現在預けていたバイクを引き取りにメキシコへ来ています。しばらく放置していたので状態が心配でしたが、なんとかエンジンもかかりました。一安心。あとはマフラーの穴あきをパテで埋めればまた走り出せるでしょう。

メキシコへ来てスペイン語を聞いた瞬間、また旅が始まったと実感できました。まるで日本に帰っていた時間が消えてしまったかのように記憶は去年につながって、それはとても不思議な感覚です。

ということで旅ブログ(昔の続きから)再開です。


***

ベリーズ・シティーのゲストハウスにベッドを取った僕。狭いドミトリーの小さなベッドでベリーズ2日目の朝を迎えるのだった。


起きたのはまだ早い時間。隣のベッドでは気持ち良さそうに寝息をたてているアメリカ人がいて、昨日の夜僕が眠りについても彼はまだ部屋に戻ってなかったから、きっとかなり遅い時間まで飲み歩いていたのだろう。

その彼を起こさぬようそっと部屋のドアを開け、宿を出た。早朝の町は人影がまばらで、うすく朝焼けを残した空が気持ちよく、のんびりと散歩をするにはこの上ない。町の中心部をぐるりと周り、橋を渡って宿に戻った。

朝の散歩。

ベッドの上で横になっていると、宿のオーナーがやってきてシングルルームが空いたからと狭いドミトリーから部屋を変更してくれた。値段は変わらず20BZでいいようだ。早起きは三文の得とはこのことか。シングルなら気兼ねがいらない。

シングルルームに荷物を運び入れると、ナルゲンのボトルにアイスコーヒーを作り、バッグにタオルとカメラと地図を入れ、カリブ海に浮かぶ小さな島キーカーカーへと向かうことにした。今日はベリーズ・シティーを観光しようかと考えていたのだけど、それほど大きな町ではないということと、ここから見る海は川の流れ込みがあるためかあまりきれいではなかったから、せっかくカリブ海の宝石と呼ばれるベリーズにいるのにそれではあまりに残念だと思い、急きょ島へ行くことにしたのだ。

フェリーは10時半に港を出ると約1時間でキーカーカーに到着した。そしてうれしいことに海は期待通りの色をしていた。

(うん。やはりカリブの海はこうでなければ)

島はリゾート的な雰囲気もあるが、根本的にのんびりとした空気に包まれていた。人種は多様で、舗装された道などなく、車なんて走っていない。ここで見かけるのはゴルフカートのような電気式のものだけだ。浜辺にはやしの木が気持ちのよい木陰をつくっていて、子供たちは水遊びに夢中だ。

大きな島ではないので、ゆっくり歩いても1時間あれば主なところは見てまわれる。僕は、島の北側にある浜辺で泳ぐことにした。服を脱ぎ捨て、きれいな海を存分に堪能する。ひとしきり泳いだ後は少し体を焼き、タマーレスを買い、やしの木陰でそれを食べた。売店で冷えたジュースを飲み、たまたま行われていたシーカヤックレースのゴールを見届け、16時のフェリーでベリーズ・シティーに戻ることにした。

河口から船が出ている。

カリブの島だ。

のんびり。

舗装路はない。

綺麗な海と木陰のハンモック。

特に何をしたというわけでもないが、なかなかいい島だった。都会にあるような便利さはどこにもないけれど、綺麗な海があり、ゆったりした時間が流れていた。気が済むまでなにもせず、海を見ながらのんびり過ごすのもいいと思えた。

シャワーを浴び、少し暗くなってから夕食をとりに出かけた。ひとりで歩く夕暮れのベリーズ・シティーは昼間とは表情を変え、なんだか少しおっかなく思える。街角にあるひとつのカフェに入り、なにかベリーズらしいものをと注文すると、ライスアンドビーンズが運ばれてきた。豆とココナッツミルクを入れて炊いた米に鶏肉が添えられている。味はさほどおいしいとは言えない。味に奥行きが感じられず、日本人には少し物足りない。それでいて12BZドルするのだから、やはり物価は高い。

ライス&ビーンズ。

部屋に戻り、ベッドに腰かけ、ビールを飲みながら明日のことを考える。明日はベリーズを抜けてグアテマラに入る予定だ。ベリーズを離れればしばらく海を見ることはないだろう。それならば今日島へ渡ってよかったと、泳いだ海の青を思い出しながらぼんやりと考えた。

おわり。