いよいよ出発です。
これからソウル乗り換えでバンクーバーまで、18時間。
到着はなぜか22日の正午…
でわでわ、行ってきます。
そもそも個人が中古のバイクを他国に輸入すること自体が厄介な作業であるのに、アメリカの同時多発テロ以降、北米ではそれがとても厳しくなったようです。ご多分に漏れず、僕もその洗礼を受けました。
まだ梅雨にもなる前です。僕はいくつかの運送会社に問い合わせをしました。誰もが耳にしたことがある大手企業もあれば、個人でやっている小さな会社もありました。メールで問い合わせをしたり、電話で問い合わせをしたり。
「北米は今とても厳しい状態ですので、そのようなご依頼はお取り扱いできません」
そんな返答も多々ありました。それでもメールを出した大手企業のひとつから、僕の携帯電話に連絡がきました。対応は早かったです。
しかしスケジュール表はもらったものの、見積もりはいつになっても送られてきませんでした。もうひとつの大手企業とも、平行でメールのやり取りをしていましたが、こちらはガス抜き証明や該非証明が必要(そんな話は聞いたこと無い)だと言い、やはり見積もり依頼に対する返事はなかなか来ませんでした。小さな会社に到っては、のれんに腕押しでした。
そんな状態だったので、梅雨に入る頃には徐々に雲行きが怪しくなってきました。
それでもなんとか先の会社から見積もりが送られてきました。やっとです。やっと。よし、これで先に進むことができるぞ。
安心したのも束の間、その見積もりを見てさらに肩を落とすことになりました。なぜなら金額欄に30万円という途方も無い数字が並んでいたからです。
なんだよこの金額は!
憤慨しました。とはいっても他社はもはや見込みがありません。僕はバイクのハンドルやフロントタイヤを外して梱包サイズを小さくするから、なんとか安く送れないか?と聞いてみました。しかしいくら小さくしても安くなるのは数万円。
どうしよう。このまま30万を払うか、新しく他の会社を探すか。どちらかを選択しなければなりませんでした。しかも他の会社を探すとなると、予定していた出国日を延ばさなければなりません。
それでも、僕は他を探しました。やはり30万円は払いたくなかったのです。
知人の勧めでジャパンエクスプレスという会社に打診しました。電話で直接問い合わせたのですが、拍子抜けするほど対応が早かったです。今までの難航振りがうそのようでした。僕のスケジュールに合わせて輸送可能な船を3つ提案してくれ、その中からひとつを選ぶと、すぐに見積もりが送られてきました。僕はその見積もりを見て、安堵のため息をつきました。先に見積もりをもらった会社と梱包サイズはほとんど変わらないのに、その金額は12万と1/3ほどだったからです。
すぐに話を進めました。出港日や通す税関を決め、梱包業者を教えてもらいました。
8月30日。
バイクを梱包業者に引き渡しました。タンクとキャブレターからガソリンを抜き、バッテリーの端子を外し、ナンバープレートを国際用に付け替え、車に載せて横浜の大黒ふ頭まで持ち込みました。カルネに載せたスペアパーツやテント、寝袋、ヘルメットなども一緒に梱包してもらいます。もちろんハンドルを外し、梱包サイズを抑えたのは言うまでもありません。
8月31日。
出来上がったカルネと他の必要書類を提出しました。これがないと日本の税関を通せないためです。
9月10日。
通関を済ませ(僕は一切ノータッチ)、横浜港から出航。
9月14日。
正式な輸送費用が言い渡されました。最初の見積もりよりもハンドルを外して梱包サイズを小さくしたので、9万円でおつりがきました。30万円とは天と地です。
9月22日。
バンクーバー港に到着予定です。僕もその日にバンクーバーに到着するので、自分が先か、バイクが先かという感じでしょう。もっとも荷物の積み下ろしに時間がかかるため、バイクが保税倉庫に入るまでには数日かかるかもしれません。
現地で税関を通し、保険に入れば晴れてバイクに乗ることができます。到着から乗り出しまで何日かかるかわかりませんが、あせっても仕方ないのでバンクーバーの観光がてら、のんびり構えるとします。
写真1
梱包業者に引き渡し。とてもあっさり。
写真2
横浜港からバンクーバー港に向けて。
これまでのブログを読んでそう思った人は少なくないと思います。僕も初めてその存在を知ったときは、聞きなれない言葉にとても違和感を感じました。
「自家用自動車の一時輸入に関する通関条約」
これがカルネの本性です。
車やバイクというものは、いくら個人の所有物だとしても、たとえ中古でおんぼろだったとしても、あまつさえ自走であったとしても、国から国へ移動させる場合は「輸出と輸入」という扱いになってしまいます。そうなると必然的に関税が課せられるわけです。国によっては新車価格の200%を課税するなんてとんでもない税率のところもあるようです。そうなると旅行者は国境を越える度にいちいち大変です。というかそんなに払えません。そこで考え出されたのがカルネです。この書類を使用すれば、一時輸入という形で関税なしで通関することができるのです。
もちろん使用できる国とできない国があります。それはかなり流動的で、情勢によって簡単に変わるそうなのでどの国がどうとは断言できないようです。カルネがないと入国できない国もありますし、また使用できない国についてはその国の法律に従う形になります。
さらにカルネを使って一時輸入すると、期限(カルネの有効期限や、滞在国の一時輸入期限など)内に必ず輸出しなければなりません。というか、そういう条件で一時輸入させてもらう、と考えたほうがいいかもしれません。
それは車両本体のみならず、カルネに記載したスペアパーツやパーソナルアイテムもすべて含み、壊れていようがなんだろうが必ず国から持ち出せよ、ということらしいです。やむを得ない場合、という対処方法もあるようなので、大したこと無いだろうと考えてしまいがちですが、実際折れたレバーを捨てられずに持ち歩いたとか、事故で再起不能になったバイクをトラックで港まで運び、そのまま日本に送り返さなければならなかった、なんて話を聞いたことがあります。面倒な話です。
と、いろいろ制約はあるものの、僕にカルネなしでいきなり旅を始めるほどの度胸もお金もないので、当然作成しました。
申請にはバイクを日本のどの税関を通すか、いつ出港するか、輸送費用はいくらかなどの情報も必要になるので、バイクを送るための船の手配と合わせて進めました。しかし船の手配が思いのほか難航し、あわせてカルネの取得もずるずると遅れてしまいました。それでも何度かJAFの関東支部に足を運び、そのたび担当の女性職員に励まされ、必要な書類をすべて揃え、無事に取得することができました。
8月の末でした。オレンジ色したカルネ手帳を手にしたのは。それまでいろいろと準備に忙しくしてきましたが、カルネ手帳を受け取ったあのときが、一番気持ちが高揚した瞬間でした。
海外をバイクで走れるんだ!
口元は自然とゆるみ、喜びと希望が心の底からわいてきました。目の前がぱっと明るくなり、同居していたはずの不安は影を潜め、世界は僕の中にあり、今ならなんでもできる。我ながら単純なもんです。
それにしてもカルネも国際免許同様有効期限が1年なのです。それ以上の旅となると再申請となるため、やっぱり有効期限が3年くらいあると楽なのになぁと思ってしまう僕なのでした。
写真
これがカルネ。隣はJマーク。バイクに貼るらしい。
日本以外の国で車やバイクを運転するには国際免許が必要になります。その特性について詳しいことは割愛しますが、住民登録している都道府県の運転免許センターに行けば即日発行されます。有効期限は1年です。
必要なものは、
・運転免許証
・パスポート
・顔写真
・申請手数料(2,500円くらい)
・認印
と、特に難しいことはありません。30分もかからずに発行されました。モノは紙製で意外にしょぼい感じです。まぁそんなことはいいとして、有効期限が3年くらいあれば楽なのになぁと思ってしまうのは僕だけではないはずです。
さて、お次は予防接種。
山形からお隣の宮城まで車を走らせます。峠を越えて1時間。仙台医療センターという大きな病院に到着です。郵便局で収入印紙を購入し、受付で必要書類を受け取り、待合室で30分。順番に名前を呼ばれ、医師の話を少し聞き、ぷすっと3秒、はい終わり。イエローカード(黄熱病受けたよの証明書)をもらって完了です。
作業自体はどれも大したことありません。秋のドライブがてらにちょっと用事を済ませたって感じですが、なんとも可笑しかったのが予防接種を受ける際に記入した問診票でした。
受付でもらった書類に中には問診票があり、待合室でそれを記入しました。まぁ至って普通の問診票です。名前や住所などの欄があり、いくつかの質問に答えていきます。
どの予防接種を受けるのか
渡航先
出発予定日
滞在期間
などなど。
しかし「目的」という項目で僕は目を疑いました。そこには
□仕事 □観光 □冒険 □その他
と書かれていたからです。
冒険!?
思わずその場で吹き出してしまいました。だって「目的」が「冒険」ですよ。素敵過ぎます。検疫所といえば国の機関であるわけで、まさかそんな洒落が効いてるとは思いもよらなかったのです。いったい誰がこれにチェックするのだろう?なんて首をかしげながら、僕が「冒険」にチェックしたのは言うまでもありません。
■作業内容
・エンジンオイル交換
・プラグ交換
・エアクリーナー交換
・前タイヤ交換
・チェーン交換
・前後スプロケット交換
・前後ブレーキシュー交換
・予備ワイヤー装着
・予備バルブ装着
・予備レバー&ホルダー装着
真夏のくそ暑い中、汗を滝のようにし、爪の奥までオイルで真っ黒にしながら済ませました。
スペアのワイヤー、バルブ、レバー&ホルダーについて。
ワイヤーは末端の太鼓部分をガムテープで巻き、クラッチ、ブレーキ、アクセルのそれぞれ今付いているワイヤーに沿わせてタイラップで、
バルブはヘッドライトの中にスポンジでくるんで、
レバーはタンク下のフレームにタイラップで、
ホルダーはハンドル中央部にそのまま装着させました。
なぜそんな面倒なことをするのか?
カルネのパーツリストに載せないため。カルネ(これについてはまた詳しく書きます)の特性上、リストに書いたパーツはなくす事ができません。出入国の通関時にリストと現物をチェックされるからです。おまけにリストにはパーツの型番まで書かなければいけません。だからバルブを交換したらかといって、切れたバルブをポイと捨てることさえ簡単ではありません。切れたワイヤーや折れたレバーをカルネのために後生大事に持っていても意味がありません。使った分は越境までに補充すればいいかもしれませんが、そうもいかないときもあるでしょう。そもそもがカルネに書かなければ面倒がないのです。
だから装着させました。これでバイクの一部でしょ?というコロンブス的発想です。中にはリストが3枚にもなる人もいると聞きましたが、そうすると消耗品の小さなパーツまでいちいち気をつけなければならないし、通関の度にその量をチェックされると思うとめまいがします。なので僕は極力リストには載せない方向にしました。
もちろんリストに載せたものもあります。
・プラグ
・タイヤチューブ前後
・チェーン
・スプロケット前後
・工具類
プラグ以外バイクに付けることができないですし、だけどもなくすほど小さなものではありません。そうそう交換が必要になるものでもありません。そしてリストに載せたパーツはバイクと一緒に船で送れるので、重い部品は船で送ってしまいたい、ということで。
工具は車載のみでは不安がいっぱいなので、SIGNETの1/4インチをメインに必要最小限で。
・ソケット(8、10、12、14mm)
・ハンドル
・エクステンションバー
・スパナ(8、10、12、14mm)
・モンキーレンチ
・バイスプライヤー
・6角レンチ(4、5、6mm)
・ニッパー
・タイヤレバー2本
・パッチ&ゴムのり
・エアポンプ
車載とあわせてこれだけあれば、とりあえずのメンテナンスはできそうです。あとは針金とガムテープと大量のタイラップ。
カルネに書かず、バイクにも装着しなかった残りのスペアパーツ(エアクリーナーエレメントやフロントフォークのOリングやダストカバーなど小さな物)は手荷物として持っていきます。
以上。
あーすっきりした。
写真1
隠ぺい工作。
写真2
真夏の作業は汗だくだく。