2010年12月25日土曜日

モーターサイクルは大陸の夢を見るか? vol.2

グランドサークルはいったいどれほどグランドなのか?
鼻息荒くした僕はサンフランシスコから一路東へ進路を取ったのでした。

いよいよグランドサークル・ツアー(僕が勝手にそう呼んでいるだけだけど)が幕を開けました。これまでのアメリカはずっと西海岸を沿うように走ってきたので、いよいよ内陸部を走ることになります。州で言えば、カリフォルニア州からネバダ州、ユタ州、アリゾナ州。山あり、谷あり、乾燥地帯あり。モニュメントバレーを東の折り返し地点とし、意欲的にいろいろなところへ足を運びました。それはどの場所も本当にグランドで、底なしに湧き出る好奇心が僕をどこまでも突き動かしたからです。


そんなこんなで到着したヨセミテナショナルパーク。誰でもその名前を一度は耳にしたことがあるでしょう。広く知られた名前です。僕の中でもヨセミテはイエローストーンと並んで行ってみたいアメリカの2大ナショナルパークでした。もちろん世界遺産に登録されているというだけで魅力的なのですが、そこにはハーフドームと呼ばれる芸術的に(神様がいたずらに切り落としたのではないかと思えるような)垂直な壁を持った大きな花崗岩があるからです。
写真でしか見たことのないハーフドーム。それを、自分の目で見られるんだ。朝からわくわくは止まりません。ツアー最初にしていきなりのメインイベント。それは例えるならレストランに入りいきなり前菜にステーキが出てくるような感じです(?)。

ゲートで入園料を払い、いざ園内へ。公園自体とてつもなく広いのですが、メインとなるのはやはりヨセミテバレーでしょう。渓谷へ向けて道はずんずん下っていきますが、ハンドルを握る僕の胸はどんどん高鳴ります。
きれいに落ち込んだU字型の谷間の先に、小さく、だけどはっきりそれとわかるヨセミテのランドマークを見つけのはまだ完全に谷底に降りる前でした。

あ、あれか!あれがハーフドームか!?

一気にテンションが上がりました。思えばこの瞬間から、大陸熱の病に感染していたのかも知れません。

いざヨセミテへ。いきなりメインディッシュ。

きれいなU字谷。氷河によって削られた。

渓谷へ降りる途中のビューポイント。遠くにはハーフドーム。
カップルも見とれる。

当初、せっかくなのでヨセミテ内のキャンプ場に1泊するのもありかななんて思っていました。が、ヨセミテはかなり人気の国立公園で、キャンプ場は予約しないと泊まれないかもなんて話を聞いたことがあります。さてどうしたものか。とりあえずはインフォメーションへ向かってみます。

すると今はもうシーズン終盤で来園者が少なく、予約がなくても泊まれるよとのことでした。しかしその値段を聞いて驚きました。なんと、1泊20ドルだと言うのです。

え?20ドル!?高っけぇ。

その日は夜半から天候が崩れるという予報でした。明日も雨のようです。怠け者の僕はきっと雨の撤収なんてことはしませんから、当然連泊する可能性大です。となると2日テントを張るだけで40ドル。他のアメリカ人のようにバスのように馬鹿でかいキャンピングカーでやってきてというならその値段もわかりますが、僕はバイクの脇にテントを張って寝袋で眠るだけです。それで1泊20ドルというのはちょっと考えてしまいます。というかあきらめました。
まだまだ10時半。昼食を食べ、短いトレイルをのんびりこなし、まったりするくらいの時間は悠にあるのです。

ビレッジには大型スーパーもあり、
およそ生活に必要なものは手に入る。

ハロウィンやってた。
trick or treat.

これがハーフドーム。すんげぇいいデザインだ。

気になる天気もなんとかもってくれ、夕方までゆっくりすることができました。しかし残念なことがひとつだけ。それはヨセミテに来てみてわかったのですが、夏季はハーフドームの頂上へ登るトレイルが開通している(往復10時間かかるらしいけど)ということでした。なんて魅力的な!もし次回があるとすればぜひとも登ってみて、その頂からの景色を独り占めしたいところです。

まったりするには最高に贅沢な場所だ。

後ろ髪を引かれつつヨセミテバレーを後にして、園内を東西に貫く120号線を東に向かいます。タイオガロードと呼ばれるそれは結構な峠で、海沿いから上げてきた標高をさらに上げることになりました。景色はいいのですが、いかんせんきつい登りにスピードが出ません。4速40kmでトコトコ行きます。
さんざん登ったおかげで気温は一気に下がり、公園出口ではついに雪が積もっていました。それもそのはず。高度は10000フィート。約3000mもあるのです。

公園を出ると今度はひたすら下りになりました。高度を7000フィートまで下げたところで休憩がてらバイクの給油。だいぶ暖かくはなったのはいいのですが、もう17時を過ぎていました。そろそろ寝床を決めたいところです。
そこへ一台のパトカーが。ちょっと身構えつつも簡単なパスポートチェックだけで済みほっとしていると、警官のひとりが今日の夜は雨だぞ、もしかしたら雪かもしれない、と言いました。

え?雪?そんなまさか。
その時の僕は思いました。きっと僕の聞き間違いだろうと。

結局ガソリンスタンドから少し進んだ場所にテントを張ったのですが、翌朝を迎えた僕は自分の耳が正しかったと正直には喜べない複雑な気持ちでした。警官の言ったとおり、果たして本当に雪が降っていたからです。カナダでさえ雪に降られた夜はなかったのに…。そうは言っても仕方ありません。今はもう止んでいて、かろうじて道路の雪がとけているのが救いです。

指先を痛めながら凍りついたテントをなんとか押し込んで出発。最初の2時間は凍えながらの走行でしたが、高度を下げるにつれ気温は上がり、昼すぎには寒さを感じなくなりました。午後に立ち寄った街では気温が20度にもなり、公園のベンチで陽射しを浴びながら昼寝を楽しめるほど。
その日はその街から10kmほど進んだ砂漠地帯にテントを張りました。両側を連なる山々に囲まれ、前方は見渡す限り何もなく、壮観。気温も24度。作業をしていると汗ばむほどです。朝は雪が降っていたと思えば、今は裸で日光浴。距離にして高々200kmも進んでいないのにこの差はすごい。こんなに暖かく、しかも壮大な景色ならビールもうまいというものです(笑)。

まさかの降雪。そりゃ夜中に寒さで目も覚める。

山を越えたら晴れていた。砂漠地帯突入。

夏か?
見渡す限りの砂漠地帯にて。今日のキャンプ地。

それにしてもこれだけ広大な場所でテントを張ったのは生まれて初めてかもしれません。気分はもう最高。真っ赤な夕焼けを見ながらの夕食も、食後の紅茶も、実に有意義な時間でした。夜は夜で満天の星空が楽しませてくれ、そこにはオリオン座がひときわ明るく光っていました。

零れ落ちんばかりの星空だった。
乾燥しているだけあってめちゃくちゃきれい。

明日はデスバレーナショナルパーク。天候の心配は、いりません。

つづく。

2010年12月21日火曜日

モーターサイクルは大陸の夢を見るか? vol.1

さてさて。

えー。

さてさてさてさて。

気がつけば今年も残すところわずかとなりましたね。いささか寒さも厳しくなってきた頃と思います。みなさんいかがお過ごしでしょうか?風邪などひかぬようご自愛ください。

僕はと言うと…。

未だロサンゼルスに居たりします。ロサンゼルス。アメーリカです。

おいおい!?
旅はどうしたコノヤロウ!!

なんてつっこみはなしですよ。お静まりください。あ、やめてください、物を投げるのは。危険です、たいへん。

なんというかですね、行きたいところに行って、居たい所に居たいだけいるのが僕の旅のスタイル -もちろんそれは言い訳なのだけどー なのです。あ、おやめください。お静まりください。で、なぜロサンゼルスにいるかというと、ちょっくら英語の勉強でもしてみっかと思ったからです。あ、危険ですよ、たいへん。


冗談はさておき。せっかくの英語環境だし、アメリカを抜けてメキシコに入ってしまうともうそこからはしばらくスペイン語だし、宿を取ったホテルが月借りすると破格の値段だったし、バイクを置ける駐車場も近くに見つけられたし、なんだとか、かんだとか、いろんな事情が絡み合って、まぁこれもいい機会かと。そんなこんなで年の瀬も迫った世間の気ぜわしさとは裏腹に、のんびり英語生活を満喫しているわけであります。

ということで、さし当たってブログに書くような目新しいことはないのですが -アメリカにどっかり根を下ろして生活している時点で目に映ることは新しいことだらけなのですが- 、サンフランシスコを出てからロサンゼルスまでの道中なんかをぼちぼちと載せてみようかと思います。


グランドサークル・ツアー。

まずサンフランシスコから向かった先はヨセミテナショナルパークでした(すでに過去形…笑)。普通乗用車ならサンフランシスコからフリーウエイに乗って東へ3時間、ということになっているのですが、そんなものは僕のモーターサイクルには関係ないのです。ちゃんちゃらおかしいのです。それでもなんとかその日の夕方に到着しようと9時過ぎにはホステルを出発しました。

ホステルから見上げた出発の空。雲が筆で書きなぐったようだった。

しかーし。サンフランシスコから抜けるベイブリッジは片道何車線もあるようなフリーウェイで、左から右から車が合流するたび僕は行き場を失った子羊然とおびえ、渡りきった先のオークランドでは1時間も道に迷うし、ヨセミテ手前の湖の見下ろせる小高い丘の上にキャンプに絶好の場所をうっかり見つけてしまい、さらに悪いことになぜかサイドバッグにはビールが入っていて、ということで自分にあまあまな僕は日が傾くにつれ刻々と姿を変えいく湖を見ながらおいしいビールを飲むという行為に甘んじてしまい、結局のんびり1泊2日の工程で走ったのでした。

フリーウェイではさ迷える子羊だ。

きれいな湖が見下ろせる場所で。名前は覚えていない。

ちなみにサンフランシスコからロサンゼルスまでは直線距離で500kmほどであります。本当ですよ。それしかないのです。グーグルマップなんかで見てもらえばわかります。どうです?えぇそうでしょう?なのでいくら僕がのんびりペースだといっても、まっすぐ下れば2日で到着できる距離なのです。だけどそのときの僕はそうしませんでした。なぜかって?そりゃぁあなたグランドサークルですよ。グランドサークル。それっぽく言えば、グランサーコー。アメリカ南西部には国立、国定公園や州立公園などが多く存在していて、それらをまとめて通称グランドサークルなんて呼んでいるらしいのですよ。そんな魅惑的なところを無情にも全部すっとばしてなかったことにしてしまうなんて、僕の人生における文化的損失と言っても過言ではないのです。ということでシスコからロスへ抜けるまでの寄り道 de グランドサークルが幕を開けたのでした。

つづく。

ということでLAまでの道のりを数回に分けてアップしたいと思います。本当は2回くらいでざっくりと、なんて思っていたのですが、遊んで書いていたらどうにも収集がつかなくなってしまったのでこの辺で一旦締めたいと思います。
次回からは写真とともに立ち寄った先々をいろいろ紹介できたらなーなんて思っているのですが、果たしていかに。