2010年7月30日金曜日

海の向こうを夢見れば

さてさて、海外をバイクで走るぞ!
なーんて鼻息荒く意気込んでいるわけですが、まだどこを走るのかを書いていませんでしたね。先走りすぎ。
ということで、今後の旅の計画(妄想?)を。

入国先はカナダです。バンクーバー。


へー。カナダ。なんで?



んんー・・・なんででしょうね?笑

あまり理由はありません。知り合いがカナダにいる、というわけでもありません。


日本からであれば世界各国へ船が出ているし、空路も合わせればそれこそどこでも行けてしまいます。過去にバイクを国外へ持ち込んだ人たちの話を調べると、アメリカ、オーストラリア、チリ、ロシア、ヨーロッパ各国、南アフリカ、インド、韓国、パキスタン、etc。選びたい放題。送りたい放題。なのです。

しかし、そんな中でもカナダは比較的通関が楽(もちろんカナダでも面倒な作業ではあるのだけど、他の国に比べるとちょびっとは楽らしい?)というだけの話です。それでカナダに決めました。もちろんそれもあやふやな情報で、実際はどうなのか分かりません。要はどこでも良かったのです。日本からバイクと共に脱出できれば。

そんな理由で選んだカナダ。ですが、僕にとって良い点がいくつかあります。まずカナダほどの先進国であれば、現地に入ってから必要なものを一通り買うことができます。治安の面でも安心なレベルというのもありますし、さらに英語圏だということも。だっていきなりパキスタン入国でウルドゥー語というのも・・・。
逆に悪い点といえば、やはり物価が高いということです。最近は円高でUSドルが1ドル80円台後半と旅人にはうれしい限りなのですが、カナダドルは結構値を上げています。貧乏旅人のセオリーとして、物価の高い国は早足で、物価の安い国はのんびりととなりますが、カナダは当然前者に入ってしまうのです。
もっともどの国に入っても結局良し悪しはあるわけで、そんなことをいちいち考えるだけ時間の無駄です。行きゃー何とかなる。それくらいで考えた方がいいのかも知れません。


さて、カナダに入国してからですが、もちろんそれで終わりと言うわけではありません。山越え、谷越え、国境越え。徐々に南下していく予定です。早くしないと北半球は冬になっちゃいます。カナダ後は当然アメリカ。そして中米、南米へ。

赤道近くまで行けば暖かいかな?
南半球まで行けば夏だよなー。
でもそんなに早く移動できんのかよ?
ていうか俺のバイクそんなにもつの?
まぁ今からそんなことに気を揉んでも仕方ないし。
そもそもいきなりカナダに沈没するかもしれないし。
物価の高い北米はマッハで抜けるかもしれないし。
旅の計画なんていつだって机上の空論。
出発して3日もすれば全く違う色になっているか、全て白紙に戻っているか。
そんなもんだし。
それが楽しいのだし。


今日もまた、布団の中でまだ見ぬ異国の地に思いを馳せては、幸せな眠りつけそうです。
嗚呼、我が夢は膨らむばかりなり。

2010年7月13日火曜日

冷たいみぞれと温かいひとこと

バイクの整備もさることながら、海外へバイクを持ち出すには各方面への届出や書類作成などがマストであり、いくつかのステップをクリアしていかなければなりません。

僕がまず最初にしたことは、バイクの国際登録証(国際ナンバー)の発行です。これが無いとカルネの申請もできませんし、もちろん国際ナンバープレートが作成できません。はじめの一歩、ですね。これは持ち出す車両が登録されている管轄の陸運局で申請します。僕の場合は地元の山形に登録しているため、庄内支局に申請ということになります。

書類の作成というと申請してから数日かかることが大半ですが、国際登録証についてはうれしいことに即日発行で、しかもカルネや国際免許のように有効期限がないので早めに登録しても問題ありません。

必要なものは

車検証(原付二種なので、市役所で発行される原動機付自転車標識交付証明書)
自賠責保険の証券
免許証(日本の)
パスポート
印鑑

これ以外に必要な書類(理由書など)は陸運局に置いてあるので、とりあえずは手持ちのカードからスタートできます。うん。一安心。
ということで去年の冬地元に帰った際、陸運局に登録しに行きました。あれは、みぞれの降る日でした。


灰色の空。これから訪れる冬に向け、東北の町は日を追うごとに寒さが厳しくなっていました。僕は、車のハンドルを握っていました。バイクはすでに越冬支度を終え、物置に押し込められて春を待っていたから、家の車を借りて陸運局へ向かったのです。スイッチひとつで適温に保たれる車内で、やっぱり車は快適だよなぁ、なんてため息をつきながら車を走らせました。
国道を走ること15分。目的地に到着です。がらがらの駐車場に車を停め、必要な書類の入ったかばんを取り、みぞれから逃げるように陸運局の建物に走りました。自動ドアと手動ドアをそれぞれに抜け、深呼吸をひとつ、いざ。

「バイクの国際登録をしたいのですが」

受付に座っているお姉さんへ第一声。しかし、鼻を膨らませた僕とは対照的に

「えと、国際登録・・・ですか?」

明らかに薄い反応のお姉さん。出鼻をくじかれるとはこのことか。言葉の内容が瞬時に理解できなかったようです。無理もありません。国際登録なんて田舎の陸運局では、きっと空から槍が降ってくるくらい珍しいことなのでしょう。事実、庄内支局でバイクの国際登録をしたことは無く、僕が初めてだったらしいです。

(そうか。一番なんだ)

なんてちょっとうれしく思ったのもつかの間、初めてという作業に担当の職員さんたちは右往左往。パソコンの画面とにらめっこし、キャビネットの引き出しから色々な書類を引っ張り出し、あげく顔を見合わせたりしています。あーだこーだ。そんな言葉が聞こえてきそうです。

(あらら?なんだか雲行きが怪しいぞ)

嫌な予感は的中するものです。カウンターで待っていた僕に、ひとりの職員さんがこう告げました。

「発行までに数日かかりますねぇ」

え?そんなはずはない。即日発行なはず。

「いや、確か当日受け取れるはずですが」

食い下がる。だってちゃんと調べたもん。それを聞いた職員さんは、うーんと首をかしげながらカウンターを離れ、あーだこーだの輪に戻って行きました。(さて、どうしようか。まぁ無事に発行されるなら最悪数日かかっても問題ないけどな)なんて思っていると、またしても職員さん。

「国際免許はお持ちですか?」

え?そんなはずはない。国際免許はいらないはず。しかも国際免許はまだ取っておらず、手元に無い。

「いや、確か国際免許は必要ないはずですが」

(おいー!なんで俺の方が説明しなきゃならんのよー)なんて心の中で突っ込みながら、さらに首をかしげる職員さんを見る目は不安に満ちていきます。

どれくらい経ったでしょう。気づけば時計の針は正午を示しています。(もう昼休みになっちゃったよ・・・)しかしまだまだゴールは見えそうにありません。きっとこのまま僕が居ては休憩もできないだろうと

「ちょっと出かけてきます。午後に戻ってきますので」

と残し、一旦退却。ラーメンで腹を満たし、本屋をぶらぶらし、なんとなく時間を潰します。そろそろ頃合いかと、2時近くになって再度陸運局へ。午前中と同じ場所に車を停め、受付を素通りしてカウンターへ。
どうですか?そんな僕の言葉を待たずに、職員さんは言いました。

「お待たせしました」

その手にはパスポートよりすこし大きなサイズの紙が一枚。「登録証書 REGISTRATION CERTIFICATE」と表記されています。

やった!

うれしかったです。無事に登録証書を手に入れることができたのです。これで僕のバイクも国際デビュー!笑

しかし紙切れ一枚を手に入れるのも色々大変です。そしてこれからはきっともっと大変なのでしょう。それでも確実にひとつ階段を登りました。これにより次のステップ(国際ナンバー作成、カルネ作成)へと進むことができます。ちなみに申請手数料が必要と書いてあるサイトを見たことがあったのですが、僕の場合お金はかかりませんでした。


とまぁここまでが去年のうちにやっていた作業です。この後冬の歩き旅へと出かけるわけで、続きの作業は今年の5月からということになります。

もう半年も前のことになりますが、職員さんが証書を渡してくれるときに言った

「気をつけて、頑張ってください」

の言葉が今でも心に残っています。

2010年7月10日土曜日

時には君の話を

初めて君に会った日のことは今でも覚えているよ。
いつになく心が高揚してしまったもの。

あれからどれくらい経つのかな?
5年?6年?
いや、それ以上かもね。

あの日から君はずっと僕のそばに居てくれる。
時にはうまくいかないこともあったけど、
一緒に色んなところに出かけたね。

僕は君を信頼しているよ。

だけど本当は気付いているんだ。

時がゆけば、いつか君も僕の元を離れてしまうことを。
ただ、今はそのことに目を伏せているだけということも。

だから。

もう一度出かけよう。
あの、心の重力がなくなってしまうような、どこまでも自由な旅へ。



なんていう臭い臭い文章は置いといて。笑

必要な書類作成と並行し、君(バイク)のメンテナンスもねってことで作業を進めることにしました。とりあえずとして一番わかりやすく、目標がはっきりした作業だからです。なにより機械いじりは楽しいし。時には君の話を。

お恥ずかしながら僕の相方、ホンダのイーハトーブはかなりの年代物です。西暦で言うと1981年生まれ。もうアラサー。(笑)小柄で、力もありません。排気量は125ccだし、トライアル車というあまり聞きなれないジャンルに分類されてしまうようなバイクです。

およそ海外に持ち出すような代物ではないよ。

というのが大方の意見です。中には否定的な言葉も耳に入りました。しかし、そういう意見に対してはどんな条件をもってしても否定的な意見しか返ってこないので、右から左です。

いいの。やってみなくちゃわからないじゃない。

とは言いつつも、今のバイク状態では異国の地を走ろうという気が起きません、自分自身。ノントラブルなんてことはまったく期待していませんが、こんな状態で走ったらそれこそ砂漠の真ん中で動かなくなって途方に暮れることになりそうです。やはり出来るだけいい状態でスタートしたいと考えるのが心理というもの。そのためにはバイクにいろいろと手を入れないといけません。思い当たる作業をざっと洗い出すと

エンジンのオーバーホール
シート張替え
ガソリンタンク交換
タイヤ交換
チェーン交換
スプロケット交換
ブレーキシュー交換
エンジンオイル交換
プラグ交換
エアクリーナー交換

さらに予備パーツの購入として

ケーブル類、左右レバー&ホルダー、タイヤチューブ、バルブ類、チェーン、スプロケット、プラグ、それに工具やエアポンプなどなど・・・。

ふぅ。書き出すだけでも一苦労。

全てをバイク屋に頼めば寝ている間に仕上がるのでしょうが、これだけの項目をお願いするとなると新しいバイクを探したほうが安上がりじゃないの?なんて結果になりそうです。なので自分で(バイクに詳しい知り合いに手を出してもらいながらですが)することにしました。

自分でやれば時間はかかりますが部品代だけで済みます。しかもあれこれいじっていればメンテナンスの勉強にもなって一石二鳥。ひとっ子ひとり居ないような場所でバイクが動かなくなってしまった時、知ってて良かった的な状況があるかもしれません。砂漠の真ん中で途方に暮れたくはないのです。

ということで、まずはエンジンのオーバーホールから始めました。去年の秋のことです。

去年の夏辺りからなんだかエンジンの調子が悪くなったのが事の発端。マフラーから白煙をふくようになりました。白煙が出るということはエンジンオイルがガソリンと一緒に燃焼しているということで、喜ばしい事態ではありません。少ないパワーがさらに落ち、唯一自慢できた燃費の良さも失われてしまいました。原因はオイル上がりかオイル下がり。こうなると一度エンジンをばらしてオーバーホールするしかありません。バイク屋に相談しながら必要な部品を取り寄せ、エンジンを下ろし、いくら構造が単純な単気筒といえど慣れない作業に四苦八苦しながら昼夜を徹して進めました。



エンジン下ろし中

問題のピストンリングとバルブステムシールを交換し、ついでにOリングやガスケットなどの消耗品も一新。さらにシリンダーヘッドとバルブのカーボンを落とすのに半日を費やし、バルブのすり合わせまで行いました。徹夜で組みあげたエンジンは白煙も治まり、落ちたパワーも復活。燃費も元通り。これでまたしばらくは走れそうな予感をアクセルをひねる右手からひしひしと感じることが出来ました。



慣れない作業に四苦八苦

エンジンのオーバーホールは、実際作業してみるとなかなか大変な作業でした。もちろん初めてなので仕方ありません。しかし必要なエンジン内の部品は小さく、数十円から数百円という低価格。特殊工具が必要にはなりますが、自分でやれば7千円くらいで済みました。実際にお願いしたことはないので分かりませんが、バイク屋に頼むと結構な工賃がかかると思います。

安く上がったのは嬉しい誤算。それよりなにより、エンジンについていろいろ勉強になったことが一番の収穫だと思います。

これでなんとか砂漠を越えて行くことができそうです。:p