2011年4月5日火曜日

モーターサイクルは大陸の夢を見るか? vol.7

モニュメントバレーで完全に打ちのめされた僕。もうどうにでもしてくれと半ば捨て鉢な感じで次なる目的地グランドキャニオンへと向かうのでした。


今日もやっぱり美しい朝焼けを眺めつつ、微細な赤砂が付着しざらつくすべての荷物をまとめ、モニュメントバレーを後にしました。今日はグランドキャニオンナショナルパークまで300km以上走らなければなりません。

これ以上眺めのいいキャンプ場を僕は知らない。

今日も荒野の一本道を行く。

いくら信号ひとつない荒野の一本道だといっても300km以上走るのは結構大変(もちろん僕のバイクでのこと)です。きっと僕ひとりならこの工程をきざんで走ったことでしょう。しかし、今日はそうできない約束がありました。それはT夫妻とのもので、昨日モニュメントバレーを後にした夫妻も一足先にグランドキャニオンへと向かっており、今日そこのキャンプ場であちあう約束をしていたのです。

何もない160号線を快調に飛ばし、ツバシティーという街で昼食と買い物。その先で89号線、さらに64号線とつなぐと道は次第に山に入り、カイバブナショナルフォレストエリアに到着しました。これを抜ければ今日の目的地グランドキャニオンナショナルパークに到着です。

交通量のない坂道をトコトコと40kmで登っていくと右手の視界は次第に開け、ついにはコロラド高原を一望できるようになりました。そして道の先に一台のマウンテンバイクを発見したのです。それは先日ペイジの街でみかけたもので、ひとりの韓国人が荷物満載のそれを懸命に漕いでいました。

非常に物静かな話し方をする男でしたが、そんな話し方とは裏腹になかなかワイルドな旅をしているようで、彼も僕と同くカナダから南下途中だと言いました。そしてパナマがゴール予定だとも。お互い旅のスタイルがとても似ていたし、彼もバイクで自国を1ヶ月かけて旅したことがあるらしく、国境を越えた旅の話は尽きません。しかし彼にも僕にも今日の目的地があります。もちろんこんな坂道を一生懸命登っているのですから彼もグランドキャニオンを目指してはいるのですが、そこは自転車とバイクの違い。

「とても今日中には到着できないよ。マイペースでいくさ」

そう言って笑う彼とは握手で別れました。

グランドキャニオンに到着したのは15時。まだまだ太陽は高い位置にありました。
東口ゲートで12ドルの入園料を払い、最初に訪れたデザートビューの展望台でその桁外れな渓谷の大きさに早速ノックアウトされ、なんとか待ち合わせのキャンプ場に到着すると、あなたのことは(T夫妻から)聞いていましたよと日本語を流暢に話す受付の女性に促され、無事に夫妻と2日ぶりの再会を果たすことができました。

到着。お決まりのショット。

瞬殺。

グランドキャニオンの米塚。

展望台の内壁。インディアン風。

モニュメントバレーでお預けになったシャワーにもようやくありつき、焚き火の炎を眺めながら夫妻の用意してくれた夕食とワインと会話を楽しみ、その日の夜はあっという間に更けていきました。それにしてもここは馬鹿みたいにでかいキャンプ場で、渓谷を見に行くのはもちろん、場内の受付やシャワーへ行くにもバイクで移動したくなるほどで、しかも今はシーズンオフでその半分が閉鎖されているというのだから驚いてしまいます。


翌日、セドナへと向かう夫妻を見送ると、僕はバックカントリーインフォメーションセンターへと向かいました。そこでバックカントリーパーミットなる書類を手に入れると、30リットルのパックパックいっぱいに荷物を詰め込み、コロラド川へ向かって渓谷を下っていきました。

そうなのです。グランドキャニオンでは渓谷をリム沿いからただ眺めるだけでなく、実際に自分の足でそこへ降りていくことができるのです。しかも許可証を取れば渓谷内にあるキャンプ場に泊まることができるのです。オフシーズンの今は当日の飛び込みでも十分その許可証をとることができ、それならば行ってみようじゃないかということになったのです。

果たして何億年もの昔に形成された地層に囲まれながらひっそりと一夜を明かすことはこの上なく神秘的な体験でした。

地の果てとも思えるコロラド川の流れを眺め、突然目の前に現れたおおきな鹿に目を見張り、しっとりと降る雨音に耳を傾け、酒を飲み、時計を気にすることなく寝袋に包まる。夜が明ければ、朝日に照らされた渓谷は目にまぶしく、夜の雨に濡れた木々からは柔らかなにおいがしました。

足元に魅惑的なトレイルがのびる。
いかない訳にはいかない。

すげぇ。

太古の昔に作られた地層を歩く。

みなさんけっこう重装備。

これがコロラド川。全部こいつのせい。

この後カリフォルニア湾へと流れる。

突然現れた鹿。こっちの様子を伺っていた。

インディアンガーデンキャンプ場。
オフシーズンなのに結構なテント数だった。

神秘的な夜。

キャンプ場を後にし、息を切らせてリムまで戻るとそこには真っ白になった僕のバイクがありました。リムとキャンプ場の標高差は約1000メートルで、それは夜の雨を雪へと変えたようです。

凍ったバイクを暖め荷物をまとめたら、次なる目的地へと向けグランドキャニオンを後にしました。

つづく。

2 件のコメント:

  1. 凄すぎる! 見てるだけで興奮する!

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  2. 凄すぎだって、まじで!
    グランドキャニオンはややっぱりグランドだったよ。

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