2015年8月17日月曜日

サウンド オブ サレント vol.1

思いがけずボゴタで野外フェスに参加した僕。人生初の野外フェスが、まさかコロンビアとは思いもよらなかったが、それも旅の魅力のひとつということか。
入場口ではアメリカの入国審査よろしく、靴の中までも調べられるという厳重なセキュリティーチェックを余儀なくされたにもかかわらず、会場内ではマリファナの匂いがプンプンするという、いかにもコロンビアを思わせる野外フェスだったが、入場が無料ということもあり、銀色に輝く満月が空に浮かぶまで、大音量のライブを楽しむことができた。


翌朝、ボゴタを出た。大きな町だけに抜け出すのに骨を折るかと思ったが、アウトピスタ・スルというフリーウェイを見つけると、すんなり郊外へ向かうことができた。南へと向かう道で、セントロのビル群が、バックミラーのなかで小さくなる。並ぶ家々が、低く、粗末になっていく。
「ボゴタか。いい町だったなぁ」
細く座り慣れたシートの上でつぶやく。永遠の秋を感じさせてくれた町。心に残る素敵な町だった。
 
 出発の朝。宿ファティマの前で。

その日はイバゲという町に腰を下ろした。目的地サレントとのちょうど中間にある。小さなバイクでの半日移動だったにもかかわらず、その季節はすっかり夏だった。またしてもマグダレナ川が流れる低地帯に降りてきたのだ。ボゴタでは忘れていた汗が、じっとりと肌にまとわりついてくる。こうなると、あの寒さがすでに懐かしい。

頃合をみて、宿の値段を聞きながら道を進んだ。予算は15,000ペソに決める。いくつめかの、セントロ手前の宿がぴたりと15,000ペソであった。空いている部屋はいくつかあったのに、一番いい部屋をあてがってくれたらしい。2階の角部屋で窓も広く、ベッド大きい。トイレとシャワーも分かれている。部屋にはなかった机も、いやな顔ひとつせずに貸してくれた。旅先でうける小さな気遣いは、本当にうれしいものだ。

シャワーの後は散歩がてらに夕食。レストランには入らず。エンパナーダの屋台をはしごした。あてもなく町を歩いていれば、至る所に屋台を見つけることができる。ふらふらとさまよいながら、見つけた屋台で小さなエンパナーダをひとつふたつと食べていく。なんだか祭りの夜店を思い出す。屋台ごとに味が違うのが楽しい。シラントロ(パクチー)たっぷりのサルサをかけると、尚おいしかった。
 
 夕暮れ散歩。

翌朝は6時半に起き、7時を少し過ぎたところで朝食を食べに出た。近くのパン屋に入ってみる。コロンビアは、パン屋が多いと思う。しかも大抵テーブルが置いてあり、買ったパンをその場で食べることができた。もちろんティント(コーヒー)だって飲める。朝早くからやっているから、どの町でも朝食には困らない。

ハム入りパンと、ティントのふたつで約1ドルの安さ。小さなカップながら、20円でコーヒーが飲めるのだからありがたい。朝の時間とあってコーヒーを飲みに来る人も多く、それだけコロンビアの人たちにコーヒーが愛されている証拠だろう。

荷物をまとめ、8時過ぎに出発。道は東へと進む。出発してすぐに驚いたのは、次に現れたカハマルカという町だった。目の前の崖の上に、突如として町が現れたのだ。深く切り立った渓谷に橋が架かっていて、それを渡った先にその町はあった。橋の上から眺めると、町がすっぱりと切り落とされてしまったようにも見える。なぜこんなところに。そう思わずにはいられない不思議な町だ。

不思議な町カハマルカ。

カハマルカを通過した道は、山へと入っていった。景色は、ダイナミックに移り変わる。しかし移り変わるのは景色だけではなく、標高を上げるにしたがい寒さも増していく。いつまで登るのだろうか。ボゴタの寒さが懐かしいなんて言ったのは誰だよ。実に自分勝手な悪態をつきながら、終わりの見えない峠道に震えを辛抱して走るが、ついに道は雲の中に突入してしまう。気温は一気にさがった。指先の感覚がなくなる。視界もきかず、もはや限界かと心が折れかけた時、やっと道は下りになってくれた。垂れる鼻水をすすり上げながら、暖かさを取り戻すべくぐんぐん下る。目指すはサレントだ。

心が折れかけた山頂はすっかり雲の中。

つづく。

0 件のコメント:

コメントを投稿