2011年1月5日水曜日

モーターサイクルは大陸の夢を見るか? vol.4

さて、どうしたものか。
ラスベガスの街を見下ろす丘の上で朝を迎えた僕は、地図を広げ今日について考えているのでした。

当初の予定ではこのまま東へ進み、ラスベガスを通過しつつグランドキャニオンナショナルパークへ向かうつもりでした。しかし地図を眺めると、グランドキャニオンから70マイルほど北にはザイオンナショナルパークなるものがあるではありませんか。

嗚呼ザイオン。どんなところだろう?

なんとなく名前くらいは聞いたことがありますが、実際なにがあるのかは知りません。これまでのナショナルパークのように予備知識が皆無なのです。

そうか。ならば行ってみようじゃないか。

はからずもヨセミテ、デスバレーのワンツーパンチですっかり頭の中がグランドサークル色に染まってしまった僕は、期待にふくらんだ胸のおかげでフットワークが軽くなり、もうどうせなら気の赴くままに走ってみようという考えになっていました。今にして思えばこの頃からすでに大陸熱病(大陸のスケールのでかさにすっかり思考回路がおかしくなること。僕が勝手にそうよんでいる)が発病していたのですが、それを自覚するのはもうちょっと先の話になります。

しかしそこに懸念点がひとつ。僕の地図(ミシュランのロードアトラスというやつだ)ではラスベガスからザイオン手前のセントジョージという街まで、道は15号線ひとつだけということになっています。そしてそれはしっかりとしたブルーの二重線で、疑う余地さえあたえず自分がフリーウェイであることを主張しています。その名もラスベガスフリーウェイ。距離約100マイル(160km以上)。考えるだけでめまいがします。

これまでの僕は極力フリーウェイを避けてきました。間違ってのってしまったり、サンフランシスコへの出入り(ゴールデンゲートブリッジやベイブリッジ)のようにそれ以外選択肢がない場合はすこしだけ使いましたが、以外は多少遠回りでも(えてして遠回りになるのだけど)一般道を走ってきました。
125ccのトライアルでフリーウェイを走ることは自殺行為です。いわずもがなまわりの流れにはついていけず、バックミラーに次から次へとあらわれる後続車に意味もなくあやまりながら、身をよじるようにして走らなければなりません。半ば捨て鉢で、とても生きた心地がしないのです。きっと背中は煤けていたはずです。

そんなフリーウェイを100マイル?冗談だろ?

さて、どうしたものか。
ラスベガスの街を見下ろす丘の上で地図を広げ考えてしまうのです。が、結局それも長くは続きません。ま、なんとかなるでしょ。これが僕です。笑

ということでますはラスベガスへ到着。街を南北にのびる604号線には豪華なホテルが乱立し、そこには自由の女神やらエッフェル塔やら、さらにスフィンクスまでも見つけることができます。大きな金のライオンもいたし、ハーレーが壁から突き出ていたし、しまいにはエレベーターがコカコーラのビンだったりしました、世界の規則性というものがまるで存在しない感じで、ここはいったい何なんだ?バイクでちんたら走り抜けるだけでもじゅうぶんその不思議な雰囲気は味わえます。とてもここが砂漠地帯であるとは思えません。そりゃオレンジの炎も燃えるというものです。

ラスベガスだぞぉ。水曜どうでしょうです。

我さきにと巨大なホテルが乱立。

ここはどこだ?

エッフェル塔は完成してた。

しかし夢とは儚いもの。やりたい放題だった街並みさえ、それを抜けるとあっけなく砂漠地帯に戻ってしまいました。それはまさに夢からさめるかのよう。あれは砂漠の蜃気楼か?街を抜けてなおラスベガスは不思議を残してくれました。

さて、ラスベガスを抜けたらいよいよ15号線に挑まなければなりません。腹を据えてランプウェイを駆け上がると、路側帯へとまっしぐらです。いちもくさん。とてもじゃないけど走行車線は走れないのです。フリーウェイの路側帯は十分に広く、そこを走っていれば本線の流れからは逃れることはできるのですが(何度かパトカーが僕を追い抜いていったが特に停められることはなかった)、そこには石ころやらバーストしたタイヤ(これが実に多い)やらがあちこちで、それをよけながら走るのに一生懸命にならなければなりません。それはそれで楽ではないのです。さらにガラス片なども多く、こんなところでのパンクはごめんです。

そんなフリーウェイをひたすら北上。1時間おきにフリーウェイをおりて休憩をし、ガソリンも給油し、セントジョージの町まで一気走りです。4時間以上の死闘のすえ、ぶじに一般道の9号線にのり換えたときはほんとうに安心しました。一般道でも結局右端が定位置であることには変わりませんが、それでもフリーウェイのようにドライバーの目が逆三角形ではない(右によって車を先に行かせると、手をあげて挨拶してくれる人が結構いる。日本ではあまりいない)ので心に余裕が生まれます。

フリーウェイ15。その名もラスベガスフリーウェイ。そのままか!

途中の街で休憩&給油。

あれ?場違いですか?

戦いつかれた僕は、ザイオン手前約20マイルの小さな街が見下ろせる丘の上でキャンプにしました。フリーウェイを走るのでもしかしたら今日中にザイオンか?なんて思いも朝にはありましたが、フリーウェイでも一般道でも最高速は変わらない僕のバイクでは、とどのつまりどこを走ろうと到着時刻にさしたる変化はないようです。

眺めの良い丘の上で、夕陽を眺めながら、せっせとワインを飲み、米をたき、チリビーンズを温め、街の明かりが灯りはじめると同時に空には星が浮かび、今日もまたゆっくりといちにちが終わるなぁなんて良い気分になって寝袋に包まるのは、きっと幸せ以外のなにものでもありません。

眺めの良い今日の寝床。ドカシーが泣かせるね。

今日も日が暮れる。灯る街明かりと宵の明星。

寝るときに気づいたのだけど、だいぶ東に来たおかげでなにげにマウンテンタイムゾーンに突入していました。メスキートという街あたりでその境を越えたようです。州もネバダ州からアリゾナ州のすみを一瞬かすめ、ユタ州へと入っています。自分にはなんの変わりもないのだけど、自動的に時計の針は1時間進んでしまうわけで(たかだか1時間なのだけど)どうにも調子が狂ってしまうのです。それでも気づかずに眠っていたら明日は1時間遅れで行動し始めるところでした。あぶないあぶない。

というかこのシリーズ(大陸の夢)も年をまたいでもう4話目です。いつまで続くんでしょうね?まったくロサンゼルスが近づきません。今回なんかザイオンさえ到着できていません。どーでもいーことにページを使いすぎなのです。というかアメリカがでかすぎなのです。僕のせいではないのです。と、責任を放擲しておきます。おやすみなさい。


つづく。

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