2016年8月21日日曜日

今度はいつ戻ってくるの? vol.1

宿近くの小路を右に折れると、それはすでにダートだった。路端の小さな看板に、イバゲ106㎞とあった。

サレントを出た日、僕はアンデスの奥深くを走っていた。それは、地図にさえ載っていない道だった。通る車は、見当たらない。道の状態も、良くない。スピードがまったく出せなかったが、おかげでアンデスのダイナミックな景観をゆっくり楽しむことができた。
ときおり人家が散見されたが、これといった集落もない。すなわち食堂はおろか、売店さえ見当たらないというわけで、なんの準備もしていなかった僕は、手持ちのクラッカーと水のみ、というさみしい昼食を余儀なくされてしまった。


行きと違うルートを選んだのには訳があった。といってもたいした理由でもなく、ジュンペイさんにおすすめのルートを教えてもらった、というだけの話である。サレントは、主要な国道からわき道に入ったどん詰まりにある小さな町だから、そこから出るには当然来た道を戻るしかないと思っていた。事実、僕が持っている地図では、それ以外のルートは見つけられなかった。だけど、その土地に住む人たちは、地図に載っていないことを知っている。

「山の中を行く道だけど、景色はすごくいいし、なによりたくさんのココラが見られますよ」

そんな言葉で勧められたら、行かないわけにはいかない。地図にも載っていない道を走れるのだから、これぞバイク旅冥利に尽きる。という訳で、僕は目の前いっぱいに広がる山々を眺めながら、何の味もしないクラッカーを水で流し込んでいる、という訳だ。

群生するココラ。自然の力強さを感じる。

アンデスの山道。

こんな山奥にも人々の営みがある。

次の目的地は、サン・アグスティンだった。これまたサレントに負けず劣らず小さな町。小さな町ではあるが、遺跡群が有名で、ツーリストの多くが、そこを訪れているようだった。まさかその遺跡群が世界遺産だったとは、クラッカーをのどに詰まらせている時点では、まったく知る由もなかったのだけど。


イバゲ。カンポアレグレ。それぞれの町で、それぞれ一晩を過ごした。イバゲでは以前立ち寄った宿に入ったのだが、宿の親父は僕のことを思えていてくれて、なんだかうれしかった。しかも前回と同じ2階の角部屋の鍵を渡してくれた。

コロンビアも、だいぶ南部まで進んできたせいか、ごちゃりとした雰囲気が町に戻ってきたように思う。北部では大きな都市ばかり見てきたからかもしれないが、すでに大型スーパーに取って代わられていたメルカド(市場)も、南部の町にはきちんとあった。どこも同じ匂いで、このすえたような何とも言えない匂いが、なんだかちょっとうれしく思う。

カンポアレグレの安宿。
ベッドひとつだけの簡素な部屋だ。

涼しい山岳地帯から抜け出し、赤茶の水をたたえた川に沿って南に走る。サンアグスティンに到着したのは、サレントを出て3日後の夕方だった。

つづく。

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