2016年8月25日木曜日

今度はいつ戻ってくるの? vol.2

客引きに捕まったのは、いつぶりだろうか。
サン・アグスティンに到着し、サレントで教えてもらったエル・マコという宿を探そうとしていた時、ふいに一人の客引きに声をかけられた。バイクにまたがった客引きだった。

(客引き?なんか久しぶりだな)

僕が移動中に立ち寄る田舎町で、客引きに遭遇することはあまりなかった。そもそも僕が立ち寄るような田舎町には観光客がいないので、当然それを目当てにした客引きも居ない。大きな都市に行く場合には、あらかじめ宿の情報を仕入れていくので、やはりあまり関係がない。しかも、バイクで移動している手前、バス停や空港など、彼らがいそうな場所に立ち入らない、というのも大きな理由だった。

そのバイクの客引きは、僕が何度も「エル・マコ、探しているのはエル・マコだよ」と口にしてもどこ吹く風だった。あげく自らのバイクで先導をはじめ、町から少し離れたひとつの宿に僕を連れて行った。もちろんその前に断ることもできたのだけど、その時はそうしなかった。なんだかあまり客引き然としていなかったことと、どこか憎めない感じが、そうさせたのかもしれない。


到着した宿は、果たして良かった。値段は15000ペソ。すこぶる安い。通された部屋にはベッドがふたつもあり、バーニョがプリバードで(シャワーとトイレが別なのは、安宿ではめずらしい)、大きな机と椅子があり、なんとテレビまで付いていた。バイクも、屋根の下に置いて良いという。
何にもまして良かったのが、町外れの緑多き場所にある、ということだった。町の中心部まで距離はあったが、この豊かな静けさは、それ以上の価値があるように思えた。
宿の人たちも大変感じがよく、僕は結局この宿に決めてしまった。値段と質で考えると、コロンビアのこれまで過ごした宿の中で、一番かもしれない。

それにしても、あの客引きは不思議だった。彼は宿の女将らしきに僕を紹介すると、さっさと自分のバイクにまたり、ふいと行ってしまった。なんだったのだろう?もしかしたら、ただのお人よしなコロンビア人だったのかもしれない。

緑の中の静かな宿だった。

 サン・アグスティンのパルケ(中央広場)。

そんな彼のおかげもあり、素敵な部屋に荷物を運び入れる。すべて終えると、時計の針は16時をまわっていた。サン・アグスティンはその遺跡が有名だが、今日はもう疲れてしまった。観光はしないことにして、町に散歩がてら買い出しに出た。
初めての町なので土地勘はない。といっても小さな町だから、帰りの方角だけ気を付けていれば、迷うこともない。気の向くままふらふら歩く。と、ボゴタのファティマという宿で知り合ったコロンビア人に、ばったりと出くわした。こんなところで再会とは珍しい。そう思ったが、さらに驚いたことに、彼はこの町に住んでいるようだった。

(へぇ。そんなこともあるんだな)

などと感心していると、彼の友達(といってもやはり旅のどこかで知り合ったらしい)アメリカ人と、一緒にパブに飲みに行く流れになってしまった。こんなところでアメリカ人とは珍しいと思ったが、さらに驚いたことに、彼はスペイン語を流暢に操るようだった。
まことに偏見なのだけど、アメリカ人が英語以外を好んで話すとは思っていなかったので、僕よりも上手なスペイン語を話すアメリカ人を目の前に、その考えを改めさせられることとなった。
ともあれ、薄暗いパブの丸テーブルに3人落ち着いて、コロンビアのビールで「サルー」と乾杯すれば、ちいさな旅のいちにちが楽しく過ぎていくのは間違いがなかった。

つづく。

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