2011年11月12日土曜日

カリブ海の宝石 vol.3

チェトゥマルの町でベリーズ領事館を探すも徒労に終わってしまった僕。ビザもなく、領事館の場所さえわからぬまま入国当日の朝を迎えたのだけど。


7時前に起きたのは理由がある。
それはあわよくば、という悪あがきからだった。もはやビザを持たずにベリーズの国境まで行ってしまおうかとも考えてもいたが、いわゆる最後の望みというやつだ。

昨日の夕方に訪れたイミグレーションは9時からのオープン。一番に乗り込んで話を聞いて(あわよくばビザを取って)戻ってきても、チェックアウトの時間までには十分部屋をきれいにすることができるだろう。それが現在考えうる最善の方法だった。

8時半にバイクにまたがった。イミグレーションには9時少し前に到着した。数人の待ち人と共に扉が開くのを待つ。オフィスは、9時きっかりにオープンした。

せっかく書類一式持ってやってきたと言うのに、カウンターのオフィサーはいともあっさり僕を払いのけた。今朝もまた取り付く島がない。

(おいおい。一体何をどうすればいいんだ!)

なにか情報だけでもと食い下がるが、相手が何を言っているのかさっぱり理解できない。

(なんだよ。やっぱりここじゃだめじゃないか)

そう思っても後の祭りだ。うなだれながら出入り口へ向かう。僕の後ろに並んでいた数人のメキシコ人が慰めの目で僕を見ている。外に出て大きく息を吐く。深呼吸とも、ため息ともいえない。バイクにまたがろうとするがやはり釈然とせず、近くにいた女性職員にもう一度たずねてみた。

「国境に行けばいいのよ」

さらりと答えた。

(それはメキシコ国民の話だ。日本人の僕の場合は違うんだ)

しかしそれを言葉で説明することはできない。

「ありがとう」

気持ちとは裏腹な答えに腹の中は煮え切らない。

さてどうするべきか。
いくら領事館ならすぐにビザが取れるといっても、今から領事館を探し出してと考えると、多少待たされたとしてもこのまま国境へ向かった方が賢いかもしれない。領事館探しに手間取って、まさかチェトゥマルにもう一泊なんてことはごめんだ。仮に半日待たされたとしても、入国できればこっちのもの。国境近くの町ならホテルだってあるだろう。そう考えるとこれ以上見つかる気配のない領事館を探すことがひどく面倒になってしまい、このまま国境に行ってみることにした。

ホテルに戻り、シャワーを浴びる。荷物をまとめて10時少し前にチェックアウトした。近くのガソリンスタンドでガソリンを満タンにし、残った小銭で露天のタコスを買った。これで手持ちのペソはない。もう僕はベリーズに行くしかないんだ。

チェトゥマルから国境は近い。標識どおりに進めば30分で到着だ。国境近くにはいくつかのホテルと食堂、商店があった。それは町と言うほどでもないが、暫時滞在するだけなら問題ないだろう。

コミーダ デ メヒコ。

国境に到着。

まずはメキシコの出国手続きをしなければならない。初めて訪れる国境は、何がどこにあるか分からない。一番手前にあるオフィスでメキシコのツーリストカードと入国税のレシート、パスポートを出すと、あっさりと出国スタンプを押してくれた。

残るはペルミソ(バイクの一時輸入許可証)の返納なのだが、ここで迷う。何人かの係員にペルミソを見せ、返納したいという意思を(身振り手振りで)伝えたはずなのに、なぜか並ばせられたのは入国審査のラインだった。そしてつい数分前に出国したばかりなのに、またもパスポートに入国スタンプを押されてしまった。どうにも話が伝わらない。いや、伝わらないというよりも、誰も話を最後まで聞いてくれないのだ。

「こいつは何を言っているか分からないが、きっと入国スタンプが欲しいのだろう」

などと皆勝手に解釈(早合点!)してしまうのだ。それも僕がまだ事情を説明している最中にだ。
埒が明かず、オフィスの奥にいたボスらしき人を呼んでもらった。その人はいままでの人とは違い、きちんと僕の話を聞いてくれ(しかも英語ができた)、やっと事情を説明することができた。
ボス曰く、

「ペルミソはバイクと一緒にあそこにるカスタム(税関)へ持っていくといい。今受け取ったツーリストカードはさっきの彼に返ぜば問題ない」

実に的確な説明にやっと要領を得た。

ツーリストカードを返し、税関へ行く。実に真面目そうなオフィサーが小さな窓越しに対応してくれた。彼は書類とバイクのシリアルナンバーを見比べ、間違いないことを確認すると、

「まだ有効期限が4ヶ月残っている。返納すると使えなくなるけどいいか?メキシコには戻ってこないのか?」

とたずねてくれた。僕はもう戻るつもりはないと答える。彼はうなずき、コンピューターに何かを打ち込むと、返納証明書(のようなもの)を手渡してくれた。僕はこのとき初めて税関がスペイン語で「ADUANA(アドゥアナ)」と言うのだと知った。

アドゥアナを知っていれば迷わなかったのに。

さぁ、これでメキシコは出国した。次はいよいよベリーズ入国だ。出国手続きに手間取ってしまい少し疲れてしまったが本番はこれからだ。今日中にベリーズ・シティーを目指したいが、審査次第では国境近くの町コロザルになるか。
とにかく無事に入国できればどちらでもいい。

つづく。

2 件のコメント:

  1. オートバイでカンクンからベリーズを通って南米へと向かっているムーミンパパです。メキシコ入国の際払ったバイクの保証金はどのように返還されるのでしょうか。

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  2. ムーミンパパさん。
    僕はデポジットをクレジットカードで支払ったので、ペルミソ返納後数日で銀行口座に払い戻しされました。

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