2015年7月10日金曜日

彩りの街 vol.2

お久しぶり過ぎるブログです。
アメリカ大陸縦断旅から帰国して早2年が過ぎようとしています。え?もう!?光陰矢の如し。時間は無情にも過ぎ去ります。だけどブログはすっかりコロンビアで立ち止まったまま。
旅の日々が懐かしい思い出になりつつある今日この頃。当時の日記やら写真を見ながらブログを起こすという作業がちょっと楽しく思えるようになりました。人間変わるもんですね。そしてぼちぼち熱を持ち始めた「旅したい病」が、この作業で少し緩和します。旅は麻薬。お願い。もうちょっと待ってくれ。
そもそも三日坊主な僕なのでどこまで進めるかわかりませんが、書いた分は順次アップしていこうかと思います。長文駄文おそまつさま。相変わらずだらだら感満載でお送りしますが、お腹一杯なんて言わず、気が向いたらのぞいてみてくださいね。では1年前の続きからどうぞ。しょっぱなから長いです。笑

***

「バイク乗りならばね」

ヘルメットを片手に呼び鈴を鳴らした僕は、その言葉の意味をすぐに理解することができた。メキシコから引き連れてきた言葉だけど、やっと溜飲を下げることができた。

仕立て屋の女性の親切によって無事に目的地にたどりつくことができた僕は、実際宿のオーナーが女性だとは微塵も思っていなかった。ましてやバイク乗りで、そんな宿だからこそ世界中のバイク乗りたちがここへ羽根を休めに来るのだということも。


荷物を載せたままのバイクでガレージに通された。宿にガレージが併設されていることはうれしい。それも建物内にある。自分の部屋から外に出ることなく直接愛車のところまで行けるようだ。毎度の宿探しはバイクの保管場所探しも常なので、ガレージがあれば一石二鳥というわけだ。数日は滞在しようと思っている宿だけに、安全なガレージがあることは精神衛生上たいへんよい。

ガレージにはバイクを数台止められるスペースがあって、見渡す壁にはたくさんの写真とメッセージカードが飾られていた。それは国籍や性別を問わないバイク乗りたちのもので、そのひとつひとつを眺めていくだけで楽しかった。見たことのある景色もあれば、まだ見たことのない風景もあった。それぞれの旅が写真を通して僕の目の前に広がっていくようで、オイルのにおいがするガレージに物語を持たせていた。それが、ホステル・メデジンだった。


メデジン。麻薬大国であるコロンビアの中枢。メデジンカルテルが暗躍し、膨大なコカインマネーがもたらされた、と聞いたことがある。もっともそれも一昔前の話で、現在組織は事実上壊滅。今街の中心部をあるいて治安が悪いと感じることはなかった。もちろん個人的な意見だし、スラムと呼ばれる場所を歩いてはいないのだけど、僕としては中米の治安の悪いとされる街の方が怖さを感じた。
街は近年すっかり衛生的に造られていて、モダンな公園や複合的なスポーツスタジアムがあり、その上をメトロと呼ばれる電車が走っていた。反面、雑多で活気のある市場通りがきちんとあり、人影少ない裏通りに薬物中毒者が生気のない目でうずくまるように座っているのを見かけると、あぁやっぱりここはコロンビアなんだなと思わずにはいられなかった。

そんなメデジンには約1週間滞在することになった。
宿のオーナーは大変親切だったし、宿の中は隅々までどこもきれいで、ビリヤード台までもあり自由に遊べた。日本人宿泊者が多く、夕暮れからパティオ(中庭)でゆっくりとビールを飲みながら旅話を語らうのが心地の良い時間であった。しかし実のところ風邪をひいて丸3日間をベッドで過ごす、というなんとも情けない状態でもあった。


というわけで、滞在中にガレージからバイクを出したのは一度きり。メデジンから真東へ、山中にグアタペという村があり、そこを訪れた時だけだ。
グアタペは大きなペニョル貯水池のほとりにある小さな村で、皆が口をそれえてそこは「メルヘン」だと言う。宿の宿泊者ほとんどがグアタペには足を運んでいた。メデジンに来たらグアタペにも行く、というのはほぼ定説となっていたが、とくに「メルヘン」という響きに僕は興味が持てなかったので、なんとなく足が向かないまま1週間が過ぎてしまった。
ふつうはバスを乗り継いで行かなければならないところだけど、バイクがあれば時間に関係なく気ままに行ける。バイク旅の大きな利点ではあるが、この「いつでも行ける」がしばしば「いつでもいいか」という考えにすり替わってしまう。僕の悪い癖だ。

「エル・ペニョールからの眺めは、最近ではいちばん感動したね」

重い腰がついに上がったのは、同じく宿に宿泊していたヨシオさんの一言だった。ラ・ピエドラ・エル・ペニョールという馬鹿でかい一枚岩は、グアタペの近く、やはり湖畔にあり、その頂上からの景色はなんとも素晴らしいということだった。


片道3時間もあれば十分だと計算したのだけど、市街地から抜け出すのが一苦労で、途中の村の屋台で昼を取ることになった。エンパナーダ。ジャガイモと鶏肉たっぷりでうまい。そして安い。
快適な山道を突き進むと、一目でそれとわかる大岩が現れた。あれが目指すエル・ペニュールだと、疑う余地はない。遠くからでも伝わる存在感は、近くに寄るとさらに増す。ふもとの駐輪場にバイクを止めた。天気も良く、ショートツーリングに最適だったのはなにも僕だけではないようで、そこにはたくさんのバイクが並んでいた。もちろん駐車場も同様で、恋人同士、家族連れが多く目についた。なるほどどうやらここはひとりで来るようなところではないらしい。けどもうすっかりそんなことを気にすることもない。

あれ、絶対そうでしょ!

ふもとから頂上まではジグザグに階段が延びていて、あまり深く考えずに岩肌に張り付けただけに思えるそれは、なかなかにスリルがあった。登るために10,000ペソ(約6ドル)必要だったのは予想外だったが、頂上にはきちんとした展望台があり、360度の景観が楽しめた。人造湖らしく山あいの尾根を残して水を張っている湖岸は入り組も、小さな島が湖中いくつも浮かんでいた。なかなかすてきな景色で、展望台をぐるりと2周もしてしまうほど満足するものだった。

階段は700段以上あった。

いい眺め。

次に訪れたグアタペは、前評判通り大変「メルヘン」だった。家々はとりどりの原色に塗られ、一様に壁にタイル画を掲げていた。タイル画はどれも違っていて、色彩あふれた幾何学的な模様は目を楽しませてくれたけど、1時間も歩いていると疲れてしまって、見つけた売店で冷えたビールを買い、湖畔に座って飲んだ。



 
「なんかいい休日だな」毎日が休みなくせにそう思うのはおかしいのだけど、青空の下、ゆらぐ湖面に反射した陽光に目を細めると、なぜだか妥当にそう思えた。ゆっくりとした時間の、ぼんやりとした思考のなかで、

「メルヘンも悪くなかったよ」

宿に帰ったらみんなにそう言おう、そんなことを単純に思うのだった。

つづく。

2 件のコメント:

  1. 祝!ブログ復活。
    今後の更新も楽しみにしてます。

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  2. ありがとー。
    ぼちぼち更新していきます!

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