2012年8月1日水曜日

コーラーの国 vol.2

果たして入国したエルサルバドル。見渡す雰囲気はグアテマラとさほど変わらない。それはそうだ。国が変わったといっても実際には川を一本越えただけだ。山の中であることには変わらない。一本道の国道を東へ。サンサルバドルと表記される看板のままに進む。約100kmをノンストップだ。

昼過ぎに国道沿いの屋台で昼食にした。牛肉を焼いたものに米、サラダ、トルティーヤ。それにコーラをつけて1.9ドル。入国したばかりでまだ物価がどれほどなのか分からなかったが、これならエルサルバドルも期待できそうだ。驚いたのは屋台なのにステンレス製のナイフとフォークが出てきたことだ。なかなか洒落ているではないか。

やがて首都サンサルバドルに到着した。首都はどうしたって都会だ。田舎の人々は窓も無い掘っ立て小屋のような家に暮らし、バンパーの落ちかけた車に乗っているというのに、ここには華やいだショッピングセンターがあり、アメリカから進出してきたファースト・フードの店が軒を連ね、走る車も多様で綺麗になった。

気持ちよさそうだ。

屋台で昼食を。

こんなの食べてます。

目指すはとにかく旧市街だった。大きな町では何にもましてホテル探しが大変だ。旧市街にある安宿街へ行けば、1泊5、6ドルからあるという話しだった。だが安宿がある地域はあまり治安が良くないとも聞いていた。エルサルバドルは20年前(つい最近の話だ)まで内戦が続いていて、未だ貧富の差が激しく、その戦いで流出した武器を使った強盗も多発しているらしい。

新市街から旧市街へ抜ける途中、2軒ほどラブホテルに入ってしまった。ホテルと書かれた看板を掲げているのでなんの疑いも無く入ってしまった。値段をたずねたときに、昼か?夜か?と聞かれやっと合点がいった。どうりでひとりなのだがと言ったときに変な顔をされたわけだ。

見つけたインペリアルというホテルはとても清潔感があり、敷地内には大きな駐車場がきちんとあり、ツインルームで1泊8ドルだった。シャワーは水のみだが水量が豊富で快適。部屋には大きな机が置かれ、テレビに扇風機まで付いていた。受付の女性も感じも良く、一目で気に入った僕はふたつ返事で2日分の金を払い、さっそく荷を解いた。

シャワーで汗を流し、ついでに溜まった洗濯物をやっつけ、ベッドにごろりと横になった。グアテマラを抜けエルサルバドルへ無事に入国したことに満足していた。思えば久しぶりの国境超えだった。止まっていた時計は、今やグアテマラに置き去りにしてきた気分だった。

テレビをつけてみたが内容がさっぱり分からない。分からないテレビは止めにして散歩に出ることにした。
にぎやかなのはやはりカテドラル周辺だ。そこにはさまざまな露店が隙間もないほどひしめき合い、商人たちの威勢のいい声が飛び交っていた。活気あふれる雰囲気に僕はついうれしくなり、当てもなくふらふらと歩き回った。道の両脇には店を広げた露店がびっしり並んでいる。食品もちろん、日用品や雑貨から、それがいったい何のために売られているのか理解できないガラクタにいたるまで多種多様だ。そんな露店が歩道を埋めつくているため、人々は図らずも車道を歩くようになる。歩行者天国という訳でもないのでしばしば車が通るのだが、これだけ大勢の通行人が律儀に車をよけるはずもなく、車も仕方なく人々の歩くスピードで進まなければならない。のんびりしたものだ。

活気に満ちている。

熱心に祈りをささげる。

ププサ。と、もちろんビール。

文字通り人ごみを掻き分けながら歩いていると、にぎわしさの中に頻繁に耳に入ってくる単語があった。「ドーラー」と「コーラー」というふたつだった。最初は何を意味しているの分からなかった。コーラーはコカ・コーラだろうかなどと考えてみたが、よく観察しているとやがてそれがダラーとクォーターの意味だと知った。
たとえば屋台で焼かれたププサ(とうもろこしの粉をねった生地の中に肉や野菜など入れて焼いた軽食。エルサルバドルといえばププサだ)はひとつコーラー(25セント)だし、トマトも5個でコーラーだった。そしてそのスペルは「QUARTER」ではなくきちんと「CORA」なのだ。ダラーやクォーターがなまってドーラーやコーラーになるあたりは、同じ非英語圏として親近感を覚えてしまう。

屋台でププサをふたつ買った。コーラーふたつで50セントだ。目の前で焼かれているププサは見るからにおいしそうで、チーズ入りと野菜入りのふたつを選んだ。付け合せの野菜の酢漬けと一緒に袋に入れてもらい、持ち帰りにした。銀色の硬貨2枚と引き換えにしてはずいぶんなご馳走のように見えた。通貨はUSドルそのものだが、物価はアメリカに比べることができないほど安い。

エルサルバドルは通貨がUSドルそのものとあって両替する必要もなく、旅行者としては楽でいい。しかしアメリカでもないのにUSドルを使うということにいささか違和感を感じてしまう。他国の通過を使う(使わなければならない)というのはどういう気分なのだろう。この先で言えばパナマやエクアドルなどもUSドルを使っているのだが、そんなことは路上で露店を構える庶民たちにとってはさしたる関心事でもないのだろうか。単にある時から通貨の色や大きさが変わった。その程度のことなのだろうか。コーラーふたつで買った熱々のププサは、まさにその答えを象徴しているのかもしれなかった。

つづく。

2 件のコメント:

  1. お元気ですか??
    Los Angeles でお世話になったタクマです!
    しっかり旅続けてるようでなんだか嬉しいです。
    引き続きご自愛のほど!
    またおじゃまします〜
    ではでは

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  2. どもども。久しぶりだねー。
    まだまだしっかり旅してるよ。

    今エクアドルにいます。やっと南半球。
    また酒でも飲みたいね。

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