2011年5月18日水曜日

バハカリフォルニアの赤い砂 vol.1

すっかり長期滞在になってしまったアメリカを抜け、3カ国目のメキシコに入国しました。ついにラテンの世界突入です。

それは単にひとつの国境を越えたというだけでなく、目では見ることはできない大きな壁を越えたような気がします。そこには今までとはまったく違った世界が広がっていました。カナダ、アメリカでの生活が長かったせいですっかり先進国の生活に入り浸っていた僕は、第三世界の洗礼を受けた気がします。


大変お世話になったフレズノの友人宅を離れ、いかにもカリフォルニアという海岸線を南下。4月24日に国境を越えました。アメリカのサンディエゴからからメキシコのティファナへ。
フリーウェイを南下するとやがて「MEXICO」と大きく書かれたゲートが見えてきて、ついに越境だと興奮しましたが、ゲート前に待つ車は(予想に反して)ほとんどなく、バイクを一度も停止させることもなくまるで何もなかったかのようにそれを通過してしまいました。ゲート前には警備員が立っていましたが、適当な感じでいくつかの車を指差して左脇にある駐車場に誘導しているだけで、大半の車は素通りです。

カリフォルニアの海岸には、こんな車がよく似合う。

アメリカ最後の夕陽。

メキシコだ!

僕は、いとも簡単にバイクでメキシコに入ってしまいました。あれ?もう入っちゃったけどいいのかな?いいわけがありません。まだペルミソ(バイクの一時輸入許可証)どころか、パスポートに入国スタンプさえ押してもらっていないのです。どうしたものかと駐車場にバイクを止め、イミグレーションのオフィサーに尋ねてみます。いったい僕はどうすればいい?

オフィサーはメキシコ訛りの英語で教えてくれました。ペルミソを発行してくれる施設の場所。必要な書類をそこで作成すること。そうしたら入国スタンプを押してやると。

その施設内にはイミグレーション、銀行、コピー屋がすべて揃っていました。なにをどうすればいいのかわからない僕は、とりあえずテレビを見ながら暇そうにしているイミグレーションのおやじに書類を見せ、ペルミソを作ってくれと頼んでみました。僕はスペイン語がまったくわかりませんが、さすがに国境近くとあり英語が通じたのが幸いでした。おやじはちょっとめんどくさそうに書類に目を通し、入国カードを書けと僕にカードとペンを渡し、終わったら銀行で金を払って来いといいました。結局イミグレーション、銀行、コピー屋と3軒たらいまわしにされながらも、1時間もせずになんとかペルミソと入国スタンプを手に入れることができました。

一度銀行で支払いをするときにバイクの国際登録証に有効期限表記がないと言われましたが、カルネを見せ、この有効期限と同じだと言ったら問題ありませんでした。バイクで国境を越えて旅をする人たちの間で、やはり同じような問題が発生しているという話を聞いたことがあったので、冷静に対応することができました。もっともどこかの意地の悪い国境警備員がわいろ目的のために難癖をつけてきたわけではないので、あせることもありません。

無事に入国手続きを済ませ、晴れてティファナの町中へバイクを走らせます。今日はメキシコ入国初日ということもあり、先へは進まずこのまま町に泊まることにしました。事前に調べておいた宿に向かい、駐車場にバイクを停めてチェックイン。特に道に迷うこともなく、入国にもそれほど時間がかからなかったのでチェックインしたのはまだまだ昼の盛りで、暗くなるまでにはたっぷり時間がありました。よしよし、これならゆっくりできるぞ。

ひとまずシャワーでさっぱりしたら散歩に出ます。宿の近くのメインストリートは人も多く華やかで、だけどそれを少し外れるとひっそりとしていて、粗末な家々が並び、埃っぽい乾いた風が吹いていました。ロサンゼルスという大都会の生活に慣れきった僕には目に映る町の風景がどこか絵空事のようで、たったひとつゲートをくぐっただけでこうも世界が変わるものかと、うまくその現実を飲み込めずにいました。

隣接する国がない日本という島国で育った僕には、陸路で国境を越えるということ自体がそもそも非日常的行為であるのに、物理的にはひとつなぎである大地に人間が勝手にラインを引き、それを境にまったく違った人種や文化が隣り合わせに息づいているということが不思議で、だけどそれが世界の大部分を占めているという事実にまだ馴染めずにいました。

今日のホテル。かなりきれいだった。

ティファナの街並み。
おおきな国旗が風になびく。

メキシコの町はとにかくカラフルだ。

おいしそうな匂いに誘われて入った食堂にはメニューがひとつきりで、1枚のプレートに鶏のももを丸ごと揚げた肉、煮豆、キャベツの千切り、サルサがのり、それにトルティーヤというけっこうなボリュームのメキシコ風定食でした。椅子に落ち着き、「ウノ」とひさし指を立てただけの注文で運ばれてきたそれを、まわりのメキシカンと同じように素手で、肉をちぎり、丸めたトルティーヤで具をすくい、口に運びます。ピリッとしたサルサと搾ったライムのさわやかな風味が絶妙で、いかにもといった味わいにメキシコに入ったことを実感できます。満腹になるほどの量でありながら、それでいて24ペソ(約170円)という値段にもメキシコを感じ、同時に金銭面においてのこれからに期待を持つことができました。

屋台で買ったタコス。
トマトとコリアンダーがいい。

どこの国でも子供たちは元気だ。

スーパーマーケットでビールを2本と、ホテル近くの屋台でひとつ100円もしないタコスを買い、部屋に戻りました。歩きつかれた体にビールを流し込むと心地よい酔いに包まれ、テレビからは耳に馴染まないスペイン語。久々のふかふかベッドに誘われるようにメキシコ初日の夜はふけていきました。

つづく。

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