2012年10月8日月曜日

ダリエン・ギャップは優雅に越えろ! vol.2

バイクで新市街へと出かけた。これから南米へ渡るには、どうなるにせよまとまった現金が必要だったし、必要な書類のコピーも作成しなければならなかった。ついでに新市街にあるママジェナ(タクシーの運転手に教えてもらったホステル)にもセイルボートの情報があるというので、出向いてみることにした。

 泊まったホステル。

 ホステルの目の前は教会だった。

新市街のビル群の中、渋滞につかまりながらもバイクを走らせる。ひとりの警察官にバイクを止められたのは交通量の少ない路地裏に入ったときだった。それ自体よくあることなので、そのときは「またか」程度にしか思わなかった。

しかしこの警察官がいけなかった。陰湿という言葉がこれほど似合う男はいないんじゃないかと思えるほどで、パスポートから免許証、登録証、ペルミソ、保険証書に至るまで、必要な書類は細部までチェックされた。国境や検問でならそれも分かるが、町中の警察官にここまでされたのは初めてだった。

しかもあろうことかペルミソの欄に記入漏れがあるなどと言い始めた。(何を言っているんだこいつは?)自国で発行した書類に文句をいうなと思った。もし仮にそれが本当に駄目だったとしても、それはお前の国の落ち度になるのではないか?

「これはパナマ税関が作ったペルミソだ。税関のオフィサーはこれでパナマに入っていいと言ったんだ。どこか問題があるのか?」

強い口調になっていることに自分でもおどろいた。なるべく穏便にと思っていたのに、重箱の隅をつつくようなこの警察官のしつこさのせいだ。しかしこいつとはまともに話しをしても埒が明かないと思えたのも事実だ。
もしこれでも開放してくれないなら「僕ではもうわかない。日本大使館に電話をするから」という最終手段も辞さない気分だった。

警察官は折れた。さっさといけと言わんばかりに僕を手で払いのけた。もうこいつは面倒くさい。そう思ったのだろう。いい気分はしなかったが「グラシアス」とだけ言い残してその場を立ち去った。

すべての警察官がこうではない。ヘルメットのシールドを上げ、僕が旅行者だと分かると、形式上書類のチェックこそすれ(それさえしない場合も多々あるが)、大抵は友好的に接してくれる。中には冗談を交えたり、「気をつけて」と声をかけられる場合も多い。ちっぽけないち旅行者に目くじら立てるなんてナンセンスだと思うのだが、稀にこういう対応をされることはあった。

それにしてもコピーを作成するためにあらゆる書類を持っていたのが幸いした。もしこれがパスポートさえ持っていない時ならば、本当に何らかの処罰を受けていたかもしれない。そう思うと運が良かったし、ざまぁみろとさえ思えてた。

新市街のホステルでは、結局今まで調べた以上の情報を得ることはできなかった。こうなるといよいよもって9日発のセイルボートに絞られてくる。
銀行ではトラベラーズ・チェックから500ドル、さらにATMから500ドルをそれぞれ作った。できればチェックで1000ドル作りたかったのだが、唯一チェックが換金できたスコティアバンクでは、トラベラーズ・チェックの換金は1週間500ドルまで、という制限があった。

書類のコピーも作成しホステルに戻ると、9日発のボートのキャプテンからメールが入っていた。果たして乗れるのか、乗れないのか。期待と不安を抱きつつ開封する。そこにはうれしい内容の言葉が綴られていた。

人もバイクも乗せることが出来る。英文だったために何度か読み返す必要があったが、メールには確かにそう書かれていた。さらに僕の他に4台のバイクが乗船するとも。
今まで閉ざされていた扉がついに開き、南米への光が差した瞬間だった。


つづく。

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