2012年10月9日火曜日

ダリエン・ギャップは優雅に越えろ! vol.3

いよいよ南米大陸への道が開けつつある。中米のどん詰まりパナマ・シティーまで南下してきたが、そこから先は陸路で移動することができない。なにせ道がない。だからたどり着いてはみたものの、僕の南米への扉は重く閉ざされたままだった。
しかしパナマ・シティーへ到着して6日目、僕はひとつの鍵を手にしていた。もちろん南米への扉を開けるための鍵だ。

最大19台載せられるセイルボートにバイクが5台では、人が少ないのかもしれない。このセイルボートを逃すと近々バイクを積めるボートは出向しないにもかかわらず。たまたまなのか、時期的なものか。世界を走るバイク乗りたちは今どこを走っているのだろう。

英文作成は四苦八苦だ。インターネットの翻訳サイトを頼りに、脂汗をかきながらセイルオートのキャプテンに返事を書く。えいと送信ボタンをクリックすると、着実に南米へと歩んでいることを実感できた。清々しい気分だ。
これでなんとかコロンビアへ渡ることが出来そうだ。一時はどうなることかと思ったが、目の前の霧が晴れ、すっと肩の荷が下りたようだった。人とバイクで900ドルという金額は痛い出費だが、無事に渡れるなら喜ばしいことだ。

送られてきたPDFファイルを何度も読み返した。英文書なのでとても一読しただけでは細部まで理解できない。何度も読み返し、出航までの流れを飲み込む。
スケジュール上ではパナマ・シティーより北東へ進んだカリブ側のカルティ港を9日発としているが、バイク乗りだけは8日の昼11時までに港集合との指示だった。前日にバイクを積み込む必要があるらしい。今日は6日なので、それはもう明後日のことだ。にわかに忙しくなった。

翌日は出航に向けての準備に精をだした。メールのやりとり、港までの道順の確認、食材整理、パッキング、そしてビールの買出し。
道順がちょっとやっかいかもしれない。11時までに港に行くとなると、距離的に見て朝5時には出発したほうが無難だ。だいぶ余裕を持たせているが、パンアメリカン・ハイウェイから港まで北上する道は悪路のようだし、市街地を抜けるまでに道に迷うことが十分に考えられた。間に合わないのは致命的だ。

とりあえず歩いて見られる範囲で、バルボア通りまでの道順を確認する。市街地はやたらと一方通行が多いので、事前に調べておかないとスムーズに走られない。とりあえずバルボア通りまで出れば、イメージ的には一本で郊外のトクメン空港近くまでいける。なんとかそこまでたどり着ければ、あとは比較的分かりやすいだろう。

しかし暑い。ホステルの部屋でさえ30度を超えている。外に出てぎらつく日差しを浴びた途端、汗が吹き出てる。買い物から帰るだけでシャワーを浴びる始末。ボケテでの涼しい日々が懐かしかった。

すべての用事を終わらせ、明日からのことを考えるとなんとも不思議な気分だった。パナマのカルティからコロンビアのカルタヘナまで、4泊5日の工程で南米へと渡る。それにより長かった北中米の旅が終わり、新たに南米の旅が始まる。まだ見ぬ大陸で、いったいどんな出来事が僕を待ち受けているのか。ドミトリーのベッドにごろりと寝転がり、ぼんやりと天井を眺めながらそんなことを考えた。答えは行ってみなければわからない。それでもあれこれ想像するだけで自然胸が高鳴った。

やはりセイルボートを選んだのは正解だと思えた。バイクと共に移動できるのもうれしいが、なんといっても海を渡るという行為が心の琴線に触れる。旅心が踊る。飛行機にこの昂揚感はない。

セビチェ&ビール。
この昂揚感!

つづく。

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