2012年9月14日金曜日

山は富士、海はカリブ、湯は別府

サン・ホセは実に都会だった。町並みは中米とは思えないほど綺麗で、外資系銀行がずらりと並び、荘厳に構えたホテルの庭の芝は綺麗に刈られていた。町角にはテニスクラブがあり、お洒落なブティックがショーウィンドウを鮮やかに飾り、女性向けのエステサロンまであった。そして驚いたことに、雨が降ると町行く人々は皆傘を差して歩いた。ここ最近、降り出した雨に傘を差して歩く人を見たことがなかった。歩道橋の上から眺めていると、それはサン・ホセの町に色とりどりの花が咲いたようだった。唯一僕だけが、傘を差さずに濡れていた。

こんな光景を目の当たりにすると、確かにアメリカに居るのではという錯覚にも陥る。しかし、往来に溢れる車の運転がそれを許さなかった。あくまでも車優先の乱暴ともいえる運転は、歩行者優先のカナダ、アメリカとは対極にある。休む間もなく聞こえるクラクションもまた馴染めない。メキシコ同様、物質的に豊かになってもラテンの気質は変わることがないということか。

降り出した雨に。

 とても近代的な町並みだ。

プエルト・ビエホはそんなサン・ホセとは対極にあるような村だった。パナマ国境に程近いカリブ海に面した小さな村。そこがプエルト・ビエホだった。

サン・ホセからたった1日の距離ではあったが、そこでは僕が今まで抱いていたコスタリカの印象をがらりと変えてくれた。標高が高くからりとした過ごしやすい気温で、白人が多く、町並みは洗練され、スペイン語が共通語であるサン・ホセに比べ、汗がじっとりと肌にまとわりつく気温で、カリブの島から流れてきた黒人が多く、子供たちが裸足で遊びまわり、英語がどこでも通じる。それがプエルト・ビエホだった。

村は1時間とかけずにぐるりと見てまわれるほどこじんまりとしていて、人々は都会にはないのんびりとした時間を過ごしていた。村のバーやレストランからはレゲエが流れ、村の雰囲気を緩やかなものにし、またそれがカリブの海によく似合っていた。

山から海へと。

プエルト・ビエホ。

レゲエとモヒートとカリブ海。

ベリーズのキーカーカー以来だろうか、久しぶりのカリブ海はさすがきれいだった。コスタリカに入ってすぐに泳いだ太平洋よりも断然いい。海はホテルから目と鼻の先で、そこではいつも黒人の子供たちがにぎやかに泳いでいた。

何もない村では、何もせずに過ごすのが正しいように思え、数日間、僕は何もせずにその日を暮らした。太陽が昇ると起きだして、散歩をして、飯を食い、海で泳ぎ、酒を飲んで、藍色の空に月が浮かんだら眠った。それは、本当にのんびりしたひと時だった。

おわり。

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