2012年9月9日日曜日

グラナダ vol.2

隣の部屋に白人の青年がひとり入ってきた。ロビーの椅子に背筋をピンと伸ばして座り本を読んでいる様からしてもかなり礼儀正しそうなのだが、欧米人がたむろしているホステルやゲストハウスではなくこんな安ホテルに来るのだからちょっとかわった性格なのかもしれない。

そんな彼とひょんなことから一緒に晩飯を食べに行くことになった。入ったレストランは少し値が張ったが、高いだけあって味は良かった。チキンのマスタード焼きに野菜マリネ、タマネギの炒め物に白米を選んだのだけど、どれを食べても中米らしからぬ味だった。店内を見れば地元客がほとんどだから、ニカラグアは比較的飯がうまいのかもしれない。

向かいに座る彼はイギリス出身だった。かなり若く、ひょろりとした体型で、背は僕よりも高い。南米からアメリカへ渡り、そこから南下中といった。これからコロンビアで半年間ボランティアをするともいっていた。イギリス英語のためかいつにもまして内容がよく聞き取れず、そもそも僕自身英語が話せないので会話が弾むことはなかった。ひょろりと背の高い白人とアジア人ふたりが、ローカルな食堂の小さなテーブルで向かい合い、黙々と食事をしているというのは、誰がどこから見てもおかしな光景だっただろう。実際その場に座っていた僕がそう思えたのだから。

居心地の良い安ホテルだったが、2泊で荷物をまとめた。それはビザが明日に切れるという日だった。グラナダからコスタリカ国境までは100kmほどだったが、もしなにかあったらと考えて前日に抜ける予定だったのだ。

夕照。

しかし、僕はもういちにちをグラナダで過ごすことにした。一番の気がかりは天候だったが、日々を見る限りその心配はなさそうだった。制限日数ぎりぎりいっぱいとなるが、明日なんとか国境を越えられれば問題はない。

居心地の良い安ホテルから、欧米人御用達のホステル・オアシスに移った。そこはドミトリーで9ドルと値は上がるが、インターネットが使えた。グアテマラのアンティグアを出て以来ずっとインターネットから開放されていたが、調べ物と、どうしても必要な作業があったので宿を移ったというわけだ。

オアシスは予想以上に欧米人宿で、かなりの数の宿泊者が居た。僕はどうしてもそのがさつさに目が行ってしまうので、欧米人宿よりは地元の安ホテルの方を好んでいたが、清潔で広い空間は悪くなかった。
午後からインターネットを使い一通りの作業をし、ひと段落したところでざぶんとプールに飛び込んだ。このホステルにはプールまであったのだ。すべてドミトリーながらも、コーヒー、紅茶、wifiがフリーでプール付きとなれば欧米人の溜まり場になるのも当然だ。

ドミはぎちぎち。

暑いところでプールは嬉しいね。

清潔で広い空間。

小さな扉から一歩外に出ればそこはニカラグアそのものだが、ホステル内にそんな雰囲気は欠片もなかった。英語が共用で、日本人が日本人宿に入って落ち着くように、ホステル内で思い思いの時間を過ごす欧米人たちを見ていると、彼らははやはりこの空間にほっとするのかもしれない。そう思えた。

おわり。

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