2009年12月19日土曜日

世の中捨てたもんじゃねぇ

僕は自分が考えているよりも、ずっと面の皮が厚いみたいだ。もしくは深く考えすぎだったのかも知れない。出来ないと思っていたヒッチハイクを今こうしてやっていることに自分自身驚いてしまう。


歩きはじめて50分。3台目の車が止まってくれた。そこは歩道が上り車線側しかなく、北へ向かう僕にとっては大変ヒッチハイクがしにくい道だった。
それでも道の反対側にいる僕を見つけて止まってくれたことはありがたい。
仕事途中だというおじさんはわざわざ少し遠回りして西目の道の駅まで送ってくれた。そして以前は北海道から沖縄に向けてのヒッチハイカーを乗せたことがあると言って笑う。自身も旅が好きでよくあちこちに出かけているという、話好きのとてもきさくな方だった。

1時間で西目に到着。時間は15時。家から60kmは進んだだろうか。もう1時間もすれば暗くなる。焦る気持ちを押さえ、さらに歩く。歩く。歩く。なかなか車は止まってくれない。1時間は歩いただろうか。何もない海沿いから本庄市に入った。車がぐんと増える。が、やはり町中は厳しい。

さらに30分ほど歩いて町外れ手前まで来た。あたりはすっかり暗くなった。またしても吹雪いてきている。こうなるとこの先の町まで歩くわけにはいかない。町外れの国道。もうここを逃すとかなり厳しい状況になると思った。
車から良く見えそうな街灯の下に立ち、手を挙げる。17時までここでやってみよう。もしそれまで捕まらなかったら少し場所変えてみよう。もうそれしか考えてつかなかった。
16時58分。ここじゃダメか…と思った時、一台の車が僕の目の前に止まった。本当に目の前に止まったので少し驚いた。車には若い兄ちゃんが運転席と助手席に乗っていた。
「後ろどうぞ」
そう言われて後部座席のドアを開けるとさらに2人の兄ちゃんが乗っていた。
なんだか身構えてしまうシチュエーションである。しかしせっかく止まってくれた貴重な車だし、今さら断る訳にもいかず荷物を荷台に入れ、後部座席に乗り込んだ。

「一度通り過ぎたんですけどね、ヒッチハイクしてる人がいるってんで、わざわざ戻って来たんですよ」
運転席の若者が言った。なるほど。だからまるでタクシーさながら僕の目の前に止まったのか。普通なら少し行ったところに止まるものだ。
「こんな時期にヒッチハイクしてる人ならいろいろ話が聞けるかなと思って」
そう言うや否や
「どこまで行くんすか?」
「宿とか飯はどうするんすか?」
「彼女とかいるんすか?」
「ていうかなんで冬なんすか?」
いきなり質問攻めだ。僕がひとつひとつの質問に丁寧に答えると、やべぇ!とかマジすか!の連発。だけどその実とても礼儀正しい若者達だった。そのことに僕はすごく清々しい気持ちになれた。

ちょうど秋田市に遊びに行くという彼らのおかげで一気に秋田市に着いてしまった。しかもこれから電車に乗ろうと思う僕のためにわざわざ秋田駅まで送ってくれた。4人にお礼を言って、4人から励ましの言葉をもらって別れる。

これから青森まで電車で移動することにした。時間は18時半。青森行き最終の鈍行にまだ間に合う。改札を抜けてホームに降りるともう電車は来ていた。これから乗り換え1回、3時間40分の鉄道旅。背負っていた荷物を下ろし、暖かい座席に座るともうぐったりだ。かなり疲れいたようだ。おかげで4時間弱の鉄道旅はもあっという間のことだった。

着いた青森駅は閑散としていた。最終電車の時間が過ぎたからなのか、北の駅の夜はどこかもの淋しい感じがした。
ここから約2km先に青森港がある。青函フェリーの最終便は確か2時だったはずだ。それに乗れば明日の朝には函館にいる。
僕は重い荷物を背負い、未だ雪の青森駅を後にした。


写真
こいつで本州脱出。深夜の逃避行。

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