2012年7月15日日曜日

ならぬシェラ日記 ~タフムルコ編~

サンタ・マリア山を終えた僕は、次にタフムルコ山(4220m)を目指した。やはりツアーに参加することなく、仲間を募って登ることにした。

タフムルコには6人で行った。
タフムルコはシェラから離れた場所にあるので、通常なら山中一泊の工程を組む。しかしテントや寝袋などの装備を人数分用意することが難しく、なので日帰りの強行軍で行くことにした。調べた結果バスは5時から走り始めるということだったので、その時間から移動をすればなんとか日帰りができる算段だった。

朝目を覚ますと4時を少し回ったところだった。眠い目をこすりベッドから起き上がる。談話室に入ると、他の部屋から起きてきた仲間がぞくぞくと集まってきた。僕はコーヒーをいれ、パンを食べた。これからさんざん歩かなければいけないので、何か腹に入れておいた方がいい。皆も軽くなにかを口にしていた。

5時に宿を出ると、まだ暗い町を歩いてバスターミナルに向かった。大通りに出たところで運良く目的地へ向かうバスが通りかかったので、それを停めて乗り込んだ(バス停でなくてもバスを停めればどこからでも乗り込むことができる)。サン・マルコスのバスターミナルで一度乗り換えると、宿を出てから3時間強で登山口に到着した。

そこに小さな集落があるものの、周りは山ばかりの場所だった。連なる山に阻まれそこからタフムルコを臨むことはできなったが、白地に黒の文字で書きなぐった看板がひっそりと立っていたので間違いなく登山口であることがわかった。

真っ青な空の下、ゆっくりとではあるが着実に登っていった。登山口からしばらくは車も通れるほどのしっかりとした道が続き、ぽつりぽつりと民家があったが、最後の民家を過ぎるといよいよ山に入っていった。道はしばしば途切れ、どこをどう進んでいいか分かりづらかった。なんとか登山道らしきものを見つけながら標高をあげる。サンタ・マリアとは違い地形は変化に富んでいたので、だらだらとした登りが続いた。開けた草地を歩き、涸れた沢を超え、岩場を登り、松林を抜けた。さすがに4000m付近になると空気が薄いのがはっきりと分かった。それでも急がずに登れば足は動いた。日帰りということで荷物が軽いというのもありがたかった。山頂から東にのびる尾根に出ると、見晴らしが利き、頂をはっきりと捉えることができた。


登山口で。

登る、登る。

下界。

木漏れ日。

ここで僕らはミスを犯す。手前に見えるピークがタフムルコであるのに、その左奥に見えるもうひとつのピークがそれだと勘違いをしてしまったのだ。奥に見えた山はコンセプシオンといい、標高はタフムルコよりも100mほど低い。しかし遠近感が目を狂わせ、奥のピークの方が高いものだと思い込んでしまった。

コンセプシオンを目指した僕らは尾根からの分岐で左に折れた。そしてその頂を目指して登るにつれ、実際は隣に見える頂の方が高いことに気づかされた。それは僕以外の皆も気づいているようだったが、誰もそれを口にすることはなかった。今から尾根に戻り登り返すだけの余裕はなかったし、実際どうしてもタフムルコに登らなければならないと思っているわけでもなかった。口には出さなかったが皆同じ気持ちだったのだろう。

コンセプシオン山頂からの眺めは抜群だった。左を見れば連なる山々が見え、右を見れば雲海がどこまでも広がっていた。切り立った岩場に立つと、足がすくんでしまうほどだった。風をよけられる場所を探し、昼飯にした。皆が持ってきた食べ物を一同に広げ、好きなものを好きなだけ食べた。僕はストーブを持ってきていたので、お湯を沸かしコーヒーをいれた。山頂で飲むコーヒーはやはり格別だった。

雲の上で。

手前の缶は、もちろんビール。

十分に満足して山頂を後にした。タフムルコ山頂ではなかったけれど、皆満足そうな顔をしていた。その頃には間違えたことさえどうでもよくなっていた。気の知れた6人で登ったのが良かったのかもしれない。最後尾を歩きながら5人の姿を見つめ、ひとりで登るタフムルコよりもいい体験になっただろうと思った。きっとそれは間違いなかった。

間違いない。

つづく。

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