2012年7月2日月曜日

ならぬシェラ日記

預けていたバイクを受け取り旅を再会させた僕。メキシコを抜けるとグアテマラのシェラへ向かってバイクを走らせるのだった。


グアテマラに入国した僕は国境の町で一晩を過ごし、次の日シェラの町へと向かった。シェラは国境から1日走れば到着できる距離にある。以前にも訪れたことがあり、そのときはタカハウスという日本人宿に滞在した。そして今回も同じようにタカハウスに入り、そしてそこをねぐらに2ヶ月半もの間滞在することとなった。

所用があり、しばらくネットが使えて安く滞在できる宿を必要としていた。その点では日本人宿は都合が良かった。大抵の日本宿には長期割引があり、宿代を月で支払うと日払いするよりもずっと経済的だった。キッチンもあるので食費も抑えられる。少しでも旅費を節約したい僕としては好条件が揃っていた。そしてタカハウスはバイクを屋内に保管できるというのも良かった。

オーナーのタカさんにしばらく滞在したい旨を話すと、好きなだけ居ればいいと言ってくれた。タカさんはとても人が良く、面倒見も良い。グアテマラという魅力的な国でにありながら、シェラというあまり魅力的ではない町(僕がそう思っているだけだが)で長く宿を経営できているのも、ひとえにタカさんの人徳と言えた。タカさんがいるからと、その人柄を慕ってシェラを訪れる旅人も少なくなかった。

滞在中のある日、僕は近くの山に登りに行くことにした。僕を含め3人で行くことになったのだが、そのうちひとりの女の子はタカハウスに泊まっておらず(宿近くにホームステイをしていた)、朝5時半にタカハウス集合ということになった。そのことは一応タカさんの耳にも入れておいた。

当日、朝起きると飼い犬のボビーがぽつんと談話室に座っていた。いつもはタカさんにべったりのボビーが、こんな朝早くにぽつんと談話室に居るのはおかしいと思った。しかしボビーに問いただしたところで何の要領も得ないので、僕はコーヒーをいれ、皆が集まるのを待った。
しばらくしてホームステイ先から女の子がやってきた。それもなんとタカさんと一緒にである。
強盗や発砲事件さえその体験談を身近に聞くことの出来るグアテマラで、朝晩の暗い時間帯に女の子をひとりで歩かせることはできないと、タカさんは女の子を迎えにわざわざ朝の5時から出かけていたのである。

なかなか出来ることではない。ホームステイ先の道ばたにうずくまっていた人影が突然立ち上がり、自分の方に歩いていたときは本当に心臓が止まるかと思ったと、そのときの心境を思い出して今にも泣き出しそうな顔をする女の子には笑わせてもらったが、そんなことをさらりとやってしまうのがタカさんなのだった。

そんなタカハウスで、僕は、ひょんなことから管理人をすることとなった。まさか宿の管理人をするとは思いもよらなかったが、いろんな事情が複雑に絡み合い、いち宿泊客として滞在していたはずだった僕は、なぜかやって来る旅人を迎え入れ見送る立場になってしまった。

2ヶ月間も日本人宿で管理人なんかをしていると実にたくさんの、そして面白い旅人に出会うことができた。放任主義の僕はきっと管理人としては役立たずだったのだろうけど、そんな楽しい旅人たちと過ごす時間は快かった。今振り返ってみると、タカハウスで過ごした日々はまさに珠玉だった。

シェラの町から。

つづく。

4 件のコメント:

  1. 先日、旅友だちから「4月にシェラから帰って来た人の話では、タカさんの体調が悪いらしいよ」と聞きました。お見舞いメールを送ったのですが、心配しています。最近の状態をご存知でしたら教えて下さいませんか。

    返信削除
  2. けいこさん

    タカさんの体調ですが、絶好調とは言えません。歳や疲れのせいもあると思いますが、去年よりも疲れやすい体になっていると思います。
    僕としては一度日本に帰ってきちんとした病院で診断してもらった方がいいと思うのですが、本人のことなのでまわりがとやかく言うことではないでしょう。

    それでも毎日楽しそうですよ。なんたってタカハウスにはいつも愉快な旅人でいっぱいですからね。

    返信削除
  3. さっそくの返信、ありがとうございます。
    また聞きなので詳しい話はわからないのですが、手術をなさったとか・・・。その手術の後で持病がかなり悪化したと聞いたものですから、心配していました。
    いつまでも長生きをして、シェラを訪れる旅人を癒してほしいと願っています。本当にいい人ですものね。

    返信削除
  4. けいこさん

    現在タカハウスにいる人に聞いたところ、最近は毎朝ボビーと散歩をしているそうですよ。
    体調は良さそうですね。
    いつまでもタカハウスを続けてほしいですね。

    返信削除