2010年2月2日火曜日

歩32日目 岩手県奥州市

天候 晴れ
気温 7時 -0.9度
   15時 3.2度

道は、真っ直ぐ南に延びていた。僕は、そこを歩いていた。太陽は僕の左から現れて、柔らかく温かい日差しを届けてくれた。

道は、真っ直ぐ南に延びていた。僕は、そこを歩いていた。太陽は僕の頭の上にあって、まぶしい程の日差しに目を細めた。

道は、真っ直ぐ南に延びていた。僕は、そこを歩いていた。太陽は僕の右に沈んでいき、紅く切ない日差しに心奪われた。

南へ。南へ。
いつかたどり着ける遥か遠い場所に向かって。

4時40分。起床。昨日の夜中に突然の強風に起こされた。テントのポールが押し曲げられるほどの強風だった。アンカーを取っていなかったので、人が入っていなかったら飛ばされてしまうだろう。風が弱まった瞬間を狙ってフライシートを外した。少しでも抵抗をなくす。
あとはもう知らんぷりをして、寝袋にすっぽりと入り目を閉じた。ただ朝を待つしかなかった。

朝には風は止んでいた。お湯だけ沸かして魔法瓶に詰めたら、素早くテントを撤収し、駅の待合室でサンドイッチを食べた。すでに始発は走りだしている。

6時50分。出発。国道456号には宮沢賢治記念館。国道4号には7時40分に入った。

今日はいつになく朝から快晴だ。太陽がきちんと東の空から僕を照らしてくれる。西にうすく紅色に染まった奥羽山脈。リュックに羽が生える。

10時00分。北上市に入り、コンビニのベンチで昼食。最近はずっとBLTサンドを食べている。昨日からレタスが道の駅で買ったわさび菜に変わっているけど。
それにしても日差しが温かい。まるで春のそれだ。蒸れたブーツを脱ぎ、足を放り出すと最高に気持ちよかった。

11時30分。北上駅を過ぎ、和賀大橋を越える。右手にスキー場が見える。あれは夏油だろうか。以前一度滑った記憶がある。

うららかな日差しに誘われたのか、歩道には毛虫達がいた。毛虫だって日差しが気持ちいいのだろう。まだ春じゃないよ、そう言ってみたけど、彼らには聞こえない。

16時30分。水沢市街地に到着。ここには友人姉妹が住んでいて、ふたりでカフェをやっている。そこに遊びに行くのが楽しみだった。本州に入ってからずっとそうだった。雪の下北半島も、きつい峠道も、夜の雨も、水沢まで行けばという思いがあったのは間違いない。

到着したカフェで姉妹に久しぶりの再開。ふたりは僕の背負ってきたバックパックの大きさにびっくりし、交互に背負ってはその重さにさらに驚いていた。
すっかりランチの時間は過ぎていたのだけど、わざわざ食事を用意してくれた。野菜不足の僕のためにサラダは皿から溢れそうなほどたくさんだった。腹ペコの僕のためにご飯も昔話に出てくるような山盛りだった。思えばまともな食事はいつぶりだろう。そのどれもがとてもおいしかったから僕はとても幸せだった。

店が閉まるのを待って、3で車に乗って温泉に出かけた。その後はおいしいホルモン焼きの店で夕食。風呂上がりの乾いたのどに流し込むビールは、たまらなく贅沢だった。

今晩は姉妹宅にお世話になった。暖かいこたつに入り、昔話に花を咲かせた。飼っている3匹のねこが心を和ませた。

外はきっと氷点下だろう。でもここは温もりに満たされていた。幸せが、至るところにあった。

今日の歩行距離約37km。

写真1
朝の奥羽山脈。あれを越えてきた。

写真2
北上川の色が素敵だった。橋の上から。

写真3
ありがとう。

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