2010年2月24日水曜日

歩54日目 静岡県島田市

天候 晴れ
気温 7時 6.1度
   18時 15.3度

箱根を西に越えるとそこは静岡県。そこから先は、僕にとって不案内な土地になる。

東北で育ち、東京で働いた。新潟にも住んだ事がある。北海道ならば延べ2年居た。だけど、そのどれもが東京以北だ。
そんな僕だから、箱根を越えてからの土地というのはとても新鮮に思う。もちろん、バイクで全国は周わった。それでも訪れたことがあるのと住むのとは、また別次元の話だ。例えばそれは町並みであったり、食べ物であったり、酒であったり、方言であったり。住んだことのない土地について、そういったのもが僕の内に濃密に蓄積されていない。だから触れるものひとつひとつが新鮮に思える。

ふとすれ違い様耳にした「だもんで」という言葉。そんなささいな事でさえ、箱根を越えたと強く感じる。
4時30分。起床。昨日の夜は暗くて気付かなかったが、どうやら近くに水場があったみたいだ。顔を洗う。そんなことを出来るのも南へ来たからだだろう。北ではとてもじゃないが水で顔など洗えなかった。ウェットティッシュで拭くのが精一杯だった。

6時20分。出発。安倍川の上で日の出を迎える。東の空の一際明るいところ。そこからオレンジ色した小さな点が、ぽっと出てきた。足を止める。ずっと見つめ。太陽はそんな僕の瞳など気にしない様子で、いつもと変わらず空へと昇っていった。オレンジ色の小さな点が、大きく丸い姿に変わるまでに、それほど多くの時間を必要としなかった。

8時10分。宇津の谷峠手前の道の駅に到着。昔はここに茶屋があり、地元で採れる自然薯のとろろそばが有名だったらしい。当時の旅人も、ここで腹ごしらえをして峠に向かったそう。僕もクラッカーとコーヒーでその準備。

宇津の谷の集落を抜けると峠は完全に山道になった。尾根を越えるまできつい登り。まるで登山だ。途中団体とすれ違う。
「旧東海道?」
そう声をかけられる。
進む方向は違っても当時を偲ぶ旅は一緒だ。特にこんな山中の、昔を今に伝える様な清々しい場所ならなおさらで、ガイドブック片手に旧道を探しての旅もなかなか楽しいものだと感じた。

12時00分。藤枝到着。暖かく、Tシャツだけになる。町中で風呂屋を探す。夜に辿り着いた先で運良く風呂屋など見つけられず、また風呂日照りが続いていた。しかしよく考えたらもう日中など汗ばむくらいの気温。北海道のように氷点下ではないし、少しくらい暗くなっても歩けるのだから、昼間風呂に入ってもいいんじゃないかと思ったのだ。
しかしそうは思っても肝心の風呂屋が見つからない。タクシーの運転手に聞いて無いと言うのだから間違いないだろう。せっかく思い直したというのに残念だ。仕方なく先へ進む。

14時20分。島田市到着。交番で風呂屋を聞く。ひとつ駅を越えた所に温泉があるという。教えてくれたのは婦警さんで、片手を腰に当て竹を割ったように話す人だった。きっと若い頃はもてたんじゃないかな?なんて思いながら説明を聞いた。値段を聞くと750円で少し高いななんて思ったけど、婦警さんがさらりと
「塩サウナが気持ちいいわよ」
と言った一言が僕の琴線に触れてしまい、そこへ足を向けた。僕は特にサウナが好きと言うわけではないが、婦警さんの腰に手を当てた言葉が本当に気持ちよさそうだったからだ。

14時40分。温泉到着。5日ぶりに汗を流す。頭は3回洗った。身体は2回。それでやっと人並みになった気がした。
塩サウナでしっかり汗をかき、露天風呂で横になる。まだ空は青いのに、荷物を背負わずこうして露天風呂で気持ち良くなるなんて物凄く優雅に感じられた。

風呂上がりにゆっくりするともう16時をとうに過ぎていた。そろそろ歩きだすかと地図を眺めると、この先2時間くらいで峠に差し掛かる事がわかった。しまった。今からだとあと1時間で暗くなる。夜の峠は危険だろう。まして旧道。街灯などあるはずもない。暗くなっても歩けるなんて考えていたのに、すっかり出鼻をくじかれた。まぁ仕方ない。今日はゆっくり休もうと、この先4kmほどの大井川に目標を合わせた。

19時00分。スーパーマーケットで買い物を済ませ、大井川の河原に到着。昨日に続き、テントが張り放題だった。
買ってきたビールを開け、横浜の友達にもらったラーメンを食べる。ここ最近はずっと差し入れの夕食が続いていて、ほとんど夕食の買い物をしていない。とてもありがたく思う。
韓国製のラーメンは体の中から温まる味で、胃袋と共に心も満たされていった。

今日の歩行距離約29km。

今日の通過宿場町

丸子宿
岡部宿
藤枝宿
島田宿

残り宿場町数30

写真1
安倍川からの日の出。安倍川餅の安倍川は、安倍川の安倍川らしい。家康命名。

写真2
宇津の谷の集落。間の宿(あいのやど)と呼ばれる宿場町間にある小さな宿場。

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