2010年2月6日土曜日

歩36日目 宮城県仙台市

天候 晴れ
気温 6時 10.0度(室内)
   19時 -0.9度

「旅は出会いだ」

そう言い切った旅仲間がいた。
旅とは何か?僕は未だその答えを出せずに彷徨い続けているが、彼の言葉にはまったく賛同してしまう。

旅の出会いは不思議だ。普段の生活の中にある出会いとはまるで濃さが違う。一晩寝食を供にすれば、そこに生まれる繋がりは太い。年齢や性別、職業、その他いろいろな肩書きなんて関係ない。一切の垣根を排除した関係。そんな素晴らしさがある。

6時40分。起床。ゆっくりと寝た。やはり暖かいと良く寝られる。いつもは固くなっている体の節々も痛くない。
足のマメは、水を抜いたところは乾燥して固まっていたが、それ以外はまだ少し痛む。この先の事を考えると、今日は無理できない。負担をかけず、悪化させないことに専念しよう。

10時00分。出発。今日は距離を気にせずにゆっくりと歩いた。昨日は必死だったので景色を見る暇もなかったが、こうしてゆっくり歩くとその余裕があっていい。たまにのんびり歩くのもいいものだ。

宗谷岬で一緒に年越しキャンプをした人とメールをしていた。
「俺仙台市に住んでるからさ、仙台を通る時はぜひ連絡してよ」
「わかりました。必ず連絡します」
大晦日のバス停で酒を飲みながらそう約束した。僕は約束通り、貰った名刺に記載されたアドレスにメールを入れた。

戸惑いはあった。果たしてメールをしていいのだろうか。厚かましくはないだろうか。その場の雰囲気、ただの口約束、もしかしたらそういう場合もある。だけどこのまま知らん顔をして仙台を通過する方が心苦しかった。

返ってきたメールは、とても温かいものだった。メールが来るのを待ってたよ。そう書かれていた。家で良かったら泊まっていけばいい。ありがたい言葉だった。

17時00分。その人が車で現れた。国道4号の歩道を南下している僕の脇に車が止まった。
「拉致しに来たよ」
嬉しい冗談だった。
「あと数百mで仙台市に入るけど、そこまで歩きたいでしょ?俺はこの先で待ってるから」
そう言ってくれた。さらに嬉しかった。僕は仙台市を目指して歩いていたので、どうせなら市内にたどり着きたかったのだ。
そんなことどうでもいいじゃん。そう思う人もいるだろう。でも、その人は僕の気持ちを汲んでくれた。きっと旅のなんたるかを知っている人なんだ。

17時10分。仙台市内に入る。仙台は距離的にみて2ndステージの折り返し地点。やっと半分歩いたぞ。そう思うと足の痛みも忘れられた。

再会の挨拶と握手を交わし、車に乗り込んだ。明日は同じ地点まで車で戻すから安心して。そう言われていたので安心して車に乗った。
暖かい車の中で、これまでの旅の話や宗谷岬での話をした。あの大晦日。たまたま近くにいて話をした。それがなかったら僕はまだ寒空の下、足をかばいながら歩いているのだ。そう思うと不思議な感覚だった。
「旅は出会いだ」
友人の言葉が頭に浮かんだ。おい、果たしてその通りだよ。僕は友人に向かってつぶやいた。

車は僕を乗せたまま温泉へ向かった。券売機でチケットを買おうとする僕を、
「これは接待だから」
と制止した。その言葉に僕はすっかり観念してしまった。もう払いますとは言えなかった。
日本縦断をしていなければ、僕はきっとお遍路をいていたと思う。だからというわけではないけど、「接待」という響きには特別な意味を感じていた。好意は素直に受ける方が双方幸せな結果になる事を、旅の中で学んだのかもしれない。

温泉でさっぱりした後は一旦その人の家に荷物を置き、歩いてご飯を食べに行った。仙台と言えば牛タンで、おいしい店をわざわざ予約までしてくれていた。僕はもう何も言えなかった。ありがとうの言葉なんかでは伝えきれなかった。温かい親切に恐縮してしまう。だけど恐縮するよりも、提供される時間を心から楽しむ事が一番の方法なんだということも、旅の中で学んでいた。

うまい料理にうまい酒。日々の旅を思うと贅沢の極みだった。
酒を飲みながらたくさんの話をした。旅の話。バイクの話。釣りの話。冬の北海道を旅しちゃ変態だよなぁ。そう言ってお互いの顔をみて笑った。
酒がすすむにつれいい気分になっていった。一体どれくらいの時間そこにいたのだろう。
「楽しいなぁ。楽しいなぁ」
何度もそう言ってくれる事に、僕も心から楽しめた。
「旅は出会いだ」

友人の言葉が頭に浮かんだ。

今日の歩行距離約23km。

写真1
足元に落ちていた。見過ごせなかった。今日から鹿児島までお供してもらおう。

写真2
仙台市に入った。2ndステージも折り返し。

写真3
贅沢の極み。厚すぎる牛タンに完全ノックアウト。

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