歩３１日目 岩手県花巻市

天候　雲のち雪のち雨
気温　7時　-4.1度
　　　15時　0.7度

田舎道が好きだ。

僕は、都市と都市を結ぶ幹線道路よりも、田舎を走る小さな道の方が好きだ。そしてそこに「なんとか街道」とか「なんとか越え」なんていう古めかしいふたつ名があったりしたらさらに申し分ない。とても魅力的だ。

国道で言えば、1桁国道よりも3桁国道ということになる。仮に国道を日本の血管だと考えると、1桁国道はより多くの血液を運ぶ大動脈で、3桁国道は体の隅々を走る毛細血管だ。
毛細血管の方が、日本を深い目で見ることが出来る。
そう僕は思っているのだけど。

4時30分。起床。昨日は寝たのが24時になっていた。また寝不足か。きな粉をまぶした食パンに、バナナとヨーグルトという朝食らしい朝食。
テントの外ではすでに散歩をしているらしい足音。まだ夜も明けてないというのになんとも早いものだ。

6時40分。出発。国道4号から外れ、市内に入る。盛岡市は通り過ぎたことはあっても立ち寄ったことがない。せっかくだから少し観光でもと思ったのだ。

北上川を越える橋の上から、昨日は見えなかった岩手山が見えた。標高は2000mとちょっと。鳥海山に次ぐ東北第2の高さだ。

盛岡城跡は今は公園になっている。本丸があった高台のあずまやで休憩。盛岡の町を見下ろせる。そこへ散歩中の老夫婦が現れて、しばし会話を楽しんだ。4年前からほぼ毎日ここへ散歩していて今日で979回目。あと21回で1000回を数えると楽しそうに言った。この高台は20mほどあるので、累計すると富士山を5往復はしている。まさに継続は力なりだ。

国道4号を使って南下しようと思っていたが、地図を見ると花巻市までは国道369号〜456号と繋げば行けるみたいだ。蛇行する分距離は伸びるが、歩くなら田舎道の方がいい。圧倒的に交通量も少ない。10時過ぎに4号から369号に乗り換えた。

12時00分。地元農家の産直販売所で、気になる寒干し大根を買ってみた。100円。小さくて軽いのところが持ち運びやすい。そのうち味噌汁にでも入れてみるか。ネギも大量にあるしことだし。

13時20分。国道369号から456号に入る。道は小さい町を繋いでいて、その間は雪に埋まった田んぼや畑しかない。のどかだ。やはり歩くなら幹線国道よりもずっといい。

16時00分。紫波に入った辺りから雪が雨に変わった。気温が上がってきている。まだ小雨程度なので気にせず歩く。

17時10分。雨は次第に本降りになっていた。新幹線のガード下で雨宿り。カッパを着ようか迷うが、そうこうしているうちに小降りになったのでそのまま出発。
飛行機が低空を飛んでいた。空港が近いのだ。飛行機は、自分がどれだけ移動したかをどうも把握できなところが好きじゃない。文字通り地に足が着いてないのだ。単純に、空を飛ぶこと自体は好きなのだけど。

雨は強弱を繰り返した。暗くなると雨足が見えず、どのくらい降っているか見分けることが難しい。でも被ったフードの雨音から、それを知ることができた。すでにジャケットは染みだしてきたが、もう仕方ないとそのまま歩いた。

20時30分。やっとのことで新花巻駅に到着。ジャケットもバックパックもしっとりと濡れ、ずっしりと重い。
とりあえず待合室のベンチに座ると、しばらくそのまま動けなかくなってしまった。疲れていた。30分ほど体力を回復させ、駅周辺を偵察する。ガード下にテントを張れそうだった。

待合室に戻り、この文章を書いている。他には誰も居らず、見ていないテレビの音だけがあった。湿ったフリースが体温を奪って少し寒い。もうすぐ22時30分になる。腹も減ったし、そろそろテントの設営といきたい。これ以上体を冷やさぬ様、インナーをもう一枚着たほうが良さそうだ。さて、今日は何を食べようか。ネックウォーマーを鼻までひっぱり上げ、待合室を出た。

今日の歩行距離約40km。

写真1
朝日と町と北上川。

写真2
橋の上から岩手山。雄大。

写真3
寒干し大根を買ってみた。小さくて軽いが、寒い地方の知恵がたっぷり詰まっている。