2010年3月1日月曜日

歩59日目 愛知県弥富市

天候 雨のち晴れ
気温 7時 8.1度
   17時 13.5度

僕は、彼女と初めて出会った日の事を思い出していた。

その日の事ははっきり覚えている。北海道の道東にある、お世辞にもきれいとは言えないライダーハウスでの事だった。雨と曇りが半日ずつ続くような嫌な天候で、僕はその宿に連泊を決め込んでいた。7月になったというのに雨の道東は肌寒く、宿に備え付けの薪ストーブで暖をとるような日だった。
そんな宿にフルパッキングの自転車に乗って現れたら女の子は、長旅をしているには珍しく耳にきれいなピアスをしていた。それが彼女だった。その時の薪ストーブとピアスが印象的で、今でもその日の事をよく覚えていた。

6時00分。起床。十分な睡眠の割りにはすっきりしない目覚めだった。夜から降り始めた雨が、未だテントのフライシートをたたいていたからだ。
また雨か。朝から雨だと動きも鈍る。ブログを更新し、朝食を済ませても、雨は止む気配を見せない。早くもカッパの出番だった。

8時30分。出発。キャンプにおいて、雨の撤収ほど嫌なものはない。何度経験してもそれは変わらない。
テント内でカッパを着込み、テント以外の荷物は全てバックパックにしまう。靴を履き、フードをかぶったら、せーのでテントから飛び出す。濡れたテントはスタッフバッグには入れず、ポリ袋に無造作に丸め、バックパックに押し込んだ。
テントは絞れば水がしたたるほどに濡れ、泥はねもひどい。今日も晴れたらどこかで乾かさなければならない。濡れたテントを乾かさないでいると、あっという間にカビが生えてしまう。

雨の国道1号をうつむきながら歩く。天気予報によれば、今日も昼から晴れてくれるそう。それだけが希望だった。

10時00分。雨は、予報通り上がった。少しずつ日差しが現れる。雨は止んだがカッパを乾かすためにしばらく着ながら歩いた。
ひたすら歩く。何も考えず。国道1号を。とにかく今一番しなければいけないことは、前に進む事だ。

やっとカッパが乾いてきた頃、僕の歩いている少し先に一台の車が停まった。見慣れない車だった。男女ふたりが車から降り、僕の方に歩いてくる。誰だろう。わからない。近くまで来た時、やっと記憶の中から現れた。それは、僕がバイクで旅していた頃に、北海道で出会った女の子だった。

まさか。
その一言に尽きた。だって彼女と最後に会ったのはもう3年くらい前だし、お互い連絡先さえ知らないのだ。そんな彼女が突然目の前に現れたら、僕じゃなくても驚くはずだ。
彼女は僕のブログを見ていてくれたのか、彼氏と共にわざわざ差し入れを持って来てくれた。
「たぶんこのあたりを歩いているかと思って」
彼女は言った。
しかしそうは言うけどもし僕が国道から外れていたら、どこかで休憩でもしていたら、出会えなかったはずだ。なんという偶然か。差し入れを受け取りながら、きっと僕にとって縁のある人達なのだろうな、そう感じていた。

3人で記念撮影をし、ふたりからは激励の言葉を、僕は感謝の言葉を、それぞれ握手と共に交わした。僕は、ふたりからしっかりその気持ちを受け取った。本当にありがとう。雨にやられていた気持ちがぱっと明るくなった出来事だった。

11時30分。桶狭間古戦場跡に到着。以前訪れた事があり、ここならテントを乾かせそうだったので立ち寄った。早速あずまやの柱に細引きを張り、水がしたたるテントを乾かした。乾くまでは僕も休憩。手前のスーパーマーケットで買ってきた団子を食べる。

13時30分。テントも乾き再出発。鳴海宿の古い町並みを足早に進む。
天白橋を越えると鳴海から宮の宿に入った。旧東海道はここ愛知の宮から三重の桑名まで、約七里を舟で渡る。

16時30分。七里の渡し到着。海へと続く水路を眺める。今は碑が残っているだけだが、当時は多くの旅人がここから舟に乗ったのだろう。

19時00分。国道沿いにある温泉に入った。またしても5日ぶりか。今日はこれから夜通し歩こうと思っていた。少しでも先に進みたかったし、天候を考えると今夜が最適だった。それに備え、しっかりと疲れをとるようにゆっくりと風呂に入った。

21時30分。身も心もさっぱりし、夜の国道1号を歩いた。右手には名古屋の夜景がきれいで、空には丸い月が浮かんでいた。丸く明るい月は、夜中の道中にこれ以上ない道連れだった。足裏のマメの痛みは無かったことにして、月を見上げて歩いた。

24時00分。弥富の駅前で今日が終わった。木曽川はもう目の前。そこは、愛知県と三重県の県境だった。

今日の歩行距離約40km。

今日の通過宿場町

知立宿
鳴海宿
宮宿

残り宿場町数12

写真1
まさかの再会とはじめまして。嬉しい出来事。

写真2
七里の渡し。一里は約3.9km。

写真3
今日も日が暮れる。ナイトランの始まり。

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