2010年3月18日木曜日

歩76日目 鳥取県鳥取市

天候 曇りときどき雨のち晴れ
気温 7時 4.3度
   17時 9.4度

「休む事は、進む事と同じくらい大切だ」

青天の霹靂だった。僕の中で何かが変わった。植村直己さんの言葉だ。

1日の疲れを癒す休息は、とても大切な事だと植村さんは言う。夜にはきちんと睡眠をとり、明日の行動に備えること。それは前に進むのと同じくらい大切なのだと。

目から鱗だった。僕は、いつも前に進む事ばかり考えていた。距離を稼ぐために、多少の無理はいとわなかった。でも、それはちょっと違うのではないか。休むことがどれだけ大切か、何となく分かりかけていた。そんな時、その言葉が僕の胸を貫いた。

きっと極地に行けば行くほど、厳しい環境になればなるほど、休むことが大切になるのだろう。それはシビアな世界に身を置かないと本当の意味を理解できないかもしれない。
僕は大してシビアな事をしていないが、それでもやっと休む事の大切さに気づき始めていた。休まなければ前に進めない。前に進むために休む。

僕の中で、休む事への考え方が変わった。

5時10分。起床。夜中に雨が降っていた。今はやんだが、路面はまだ濡れている。バス停のおかげで僕は濡れずに済んだ。
今日も熱いスープを作る。寝起きの体に優しい。パンにもよく合う。

6時20分。出発。地元の人達が、すでに散歩やらジョギングやらで動き始めているので、あまりのんびりしていられない。もっとも、テントがない分、撤収作業は楽だ。

空はどんよりとした曇り。太陽は顔を出していない。天気予報ではこれから晴れると言っていたが、果たしてどうなのだろうか。

8時00分。鳥取市に入る。国道9号は鳥取の市街地に入ると高速道路のようなバイパスになるので、その手前で県道319号に入った。県道はこのまま市街地を通過し、その先で再び国道に合流する。

バス停のベンチで休憩し再び歩き始めると、突然雨が降りだした。小雨とは言えないような雨で、カッパを着る暇がなかった僕はそのまま濡れるしかなかった。雨は20分ほどでやんでくれたが、全身しっとりと濡れた。それでも雨がやむと雲が切れ、太陽が顔を出してくれたおかげでなんとか歩きながら乾かす事ができた。

9時30分。鳥取砂丘に到着。小雨。その割りには観光客がたくさんだ。大型バスも乗り付けている。やはり鳥取と言えば鳥取砂丘なのだろうか。
だけど、砂丘の入り口からさらりと眺めて僕はそれで終わり。早く先に進みたいというのもあるが、過去に2回訪れていたし、僕にはどこから見てもただの広い砂浜にしか見えなかったからだ。

県道は、砂丘のある場所から坂を下ると国道9号の下を通過し、市街地に入った。市街地を歩きながら買い物を済ませる。抜ける頃にはすっかりバックパックが膨れ上がっていた。

12時30分。道は海沿いを走るようにる。久しぶりの海岸線。低気圧の影響か、波は荒い。空は、幾分青空が広がっていた。右手に海を見ながら気持ち良く歩く。それでも距離を稼ぐために立ち止まらない。風もやんではくれない。

16時30分。国道9号の分岐点に差し掛かる。米子方面はそのまま直進だったが、その先で自動車専用道路となるため歩きの僕は右折して、旧道のような道に入らねばならなかった。
大半の車は自動車専用道路へ行ってしまうので、僕が歩いている道にはほとんど車は通らなかった。交通量が少ないのは精神的に楽なのだけど、岬を回り込むように道が続くためにアップダウンが激しく、体力的には楽ではなかった。

17時30分。8%の勾配を持つ岬は強敵で、息を切らせて越えた。眺めが良かったのが救いだ。岬を越えた先にあったのは青谷という集落だった。

小さな集落だった。たぶん唯一のスーパーマーケットに立ち寄り、海沿いのバス停の中にテントを張った。今日も風が強くかったのと、バス停の窓がひとつ割れていたと言うのがその理由だ。バス停内に時折舞い込んでくる風に、テントがなければ寝られそうになかったのだ。こういう時に山岳用の小さなテントは場所を選ばなくて良い。

自動車専用道路のおかげで交通量が極端に少なく、国道とは思えないほど静かだった。しばしは通るのは地元の車だけ。
打ち寄せる波の音を聞きながら、今日はひっそりと一夜を過ごせた。

今日の歩行距離約40km。

写真1
鳥取砂丘。ラクダはいなかった。

写真2
岬の上から。辛い登りの後のご褒美。

写真3
夕日と日本海。間違いない。

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