2010年3月20日土曜日

歩78日目 島根県安来市

天候 快晴
気温 7時 3.1度
   18時 12.6度

向かいからやってきたのは、ひとりのおじさんだった。
リュックを背負っている。一目で歩き旅だとわかった。そして、それはお互い様だった。

軽い挨拶の後、どこからどこまで歩くのか、今日で何日目かを、交換した。おじさんは60歳位に見えた。愛媛の佐田岬から北海道の網走まで、分割で歩いていると言う。長時間歩くと膝が痛くなるとも言っていた。

お互い頑張りましょうと別れたが、僕は大変勇気をもらった。なんといってもあの歳で歩き旅だ。夢があるじゃないか。僕はまだまだやれるんだ。それは、間違いない事だ。

4時20分。起床。やはり屋内は寒くない。隣のベンチではチャリダーの彼がまだ寝息をたてている。起こさぬように静かに朝食にした。コーヒーを飲み、もう一度湯を沸かし、魔法瓶に紅茶を作る。砂糖を入れて甘くした。歩いている時に飲む甘い紅茶はとてもおいしい。

せっかく静かに撤収作業をしていたのだけど、休憩所に現れたひとりのおじさんに静寂を破られた。大きな声で話すものだから、寝ている彼を起こしてしまった。まだ5時前である。いつもなら寝ている時間だろうに。

5時50分。すっかり目が覚めてしまったチャリダーの彼に見送られながら出発した。気を付けて、良い旅を。握手で分かれた。

空は明るくなっていたきているが、まだ太陽は昇っていない。早朝の国道は行き交う車も少なく、穏やかで清々しい。しばらく歩くと東の空がオレンジ色に輝いた。日の出だった。

明るくなると、左手に大山が現れた。昨日は曇り空のためにはっきりとは見えなかったが、今朝は輪郭までもが実に美しい。久しぶりにリュックに羽が生える。国道はこの先も山と海の間を抜けていく。きっと今日は1日中大山を眺めながら歩く事が出来るだろう。
事実、今日は様々な角度から、様々な大山を眺める事が出来た。

9時00分。コンビニの駐車場で休憩をしていると、目の前を自転車が通りすぎて行った。あの彼だ。こちらに気付いておらず、僕は手を振ってみた。だけどそのまま行ってしまった。国道を歩いていれば気づいただろうが、休憩中とはタイミングが悪い。
それでも彼も九州を目指すと言っていた。もしかしたらまたどこかで会えるだろうか。縁があれば、彼とはきっとどこかで。

10時00分。海の向こうに美保関が見えた。きれいに湾曲した砂浜がそれに続いている。弓ヶ浜海岸だ。その付け根には米子市で、それを抜ければついに島根県に入る。

11時40分。米子市に入った。鳥取県もじきに終わり、島根県に入る。
市内のスーパーマーケットで買い物。最近は麺類続きで、この前久しぶりに米を炊いたらとてもおいしかった。だから散々悩んだ挙げ句、米を買った。2kg。それが一番少ない量だったからだ。
いきなり荷物の重量が2kg増えるのは結構きつい。多分歩いて旅する人は、2kgの米は買わないと思う。でも僕は馬鹿だから買ってしまう。これもトレーニングだと思い、気合いを入れた。

17時20分。島根県に入った。鳥取県が終わった。ほぼ3日で抜けたことになる。いいペースだ。これで本州は山口県を残すのみ。九州も近い。

国道は、ふたつみっつ小さな峠が連続していて、それを越えると安来市街地になった。時計は18時半を示している。今日はここまでだろう。
安来駅へ行き、観光案内で周辺地図をもらう。さらりと目を通すと、駅からすぐの所に公園があった。しかも港近くだ。たぶん、ここならいけるだろう。そんな感触があった。

その公園は、実際駅から歩いて5分もなかった。港が目の前に見え、水場があり、人が居なかった。申し分ない。すぐにテントを張った。
いい寝床が見つかると本当に安心する。寝床探しは毎日のことなので、これが結構大変な作業なのだ。歩きとなるとさらに厳しく、ここが駄目だったから次の場所へ、と言うのがなかなか困難だ。だからこういう日は実に嬉しい。

テントに入り、バックパックの中身を一旦全て出したら、いつもの場所にいつもの荷物を配置した。これで準備完了。手を伸ばせば必要な物が必要な時に手にできる。
今日は、早速2kgの米に手を付けた。米の炊ける匂いが、空っぽの胃袋を刺激した。

今日の歩行距離約45km。

写真1
東の空が明るい。もうじき夜が明ける。

写真2
歩く人。夢がある。

写真3
大山。荒々しい。

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