2010年3月17日水曜日

歩75日目 鳥取県岩美郡岩美町

天候 曇りときどき晴れ
気温 7時 8.5度
   17時 7.7度

西から東へ。雲が流れていた。
風は、1日中吹いていた。朝目を覚ましてから、夜眠りに就くまで、決してやむ事はなかった。山あいの九十九折りの道を歩いていた僕は、追い風になったり向かい風になったりするそれに一喜一憂していたが、見上げた空には、いつも雲が流れていた。
西から東へ。それは常に変わることはなかった。

4時40分。起床。風は一晩中吹き荒れていた。かなり奥まった場所にテントを張ったのだけど、それでも何度か激しく揺らされ目が覚めた。起きた今も風はやんでいない。

6時50分。出発。今日は青空が垣間見れる。風はあるが、雨は過ぎただろう。昇った朝日が濡れた路面を乾かし始めていた。

歩き始めて1時間でトンネルに入った。長いトンネルだ。蘇武という名前のそれは、全長が3692mある。僕がこれまで歩いて来た中で最も長いだろう。たぶんこの先もこれ以上はない。
トンネル内は空気が悪く、いつも早足だ。早く抜け出して、外の空気を吸いたくなる。車であれば窓を締め切ればいいのだが、歩きではどうしようもない。実に無防備だ。深く息を吸わないようにするのが精一杯だ。もっとも、激しい雨の日などはトンネルがすごく有り難かったりするのだけど。
結局、蘇武トンネルは40分で抜け出した。40分待たされた外の空気は、ことのほかうまかった。何度も何度も深呼吸した。

9時30分。峠を下ると国道9号に突き当たった。京都から始まり、丹後半島へ行くために外れた国道だったが、これからまたしばらく付き合うことになる。標識には京都から154km、鳥取まで51kmとあった。

国道9号に入っても峠のアップダウンは続いた。一度真っ黒な雨雲が突如目の前に現れて雨を降らせたけど、カッパを着るほどではなく、ほどなくしてやんだ。

13時30分。湯村温泉に到着。気温は10度あるのだけど、未だ風が強くて体感温度は低い。日が照ると暖かいが、次第に曇が厚くなってきたのでネックウォーマーを着けた。寒い時に首元を暖めるのは効果的だ。

16時30分。千谷トンネルを通過している最中に、鳥取県に入った。それは突然の出来事だった。あまり県境を意識していなかったので、トンネル内を黙々と歩いていたらふいに県境が現れた。あ、ここから鳥取なんだ。そんな、あっけない感じだった。

18時20分。岩井温泉に到着。今日は風呂日。珍しく中2日という好成績。僕だってやれば出来る。

そもそもこの温泉地に朝6時から夜22時まで開いている温泉があることを知っていた。夕日ケ浦で地図を調べた時に見つけたのだ。それだけ長く開いているのだから、国道9号を歩いていれば何時に到着しようと風呂には入れるだろうと確信していた。そして今日、都合よく夕方に到着したというわけだ。

岩井温泉の入り口に立ち、僕は数年前の事を思い出していた。なぜなら一度来たことがあったからだ。地図で見たときは思い出せなかったが、実際到着してみたらすぐに分かった。ここには来たことがある、と。

あの時は確か秋の始まりで、よく晴れた日だった。鳥取砂丘の隣のキャンプ場に泊まっていて、旅の友人と一緒に来たのだ。その時僕はただ連れられて来ただけなので地名を覚えていなかったが、今こうしてこの場所に立つと、あの頃の記憶が鮮明に蘇る。懐かしい記憶。

300円でチケットを買い、熱めの湯に身を浸した。湯の中で足の裏をよくマッサージするのが習慣になっている。地元の人達が入れ替わりで浸かりにくる。夕暮れ時の、いい時間なのだろう。楽しそうな、でもあまり聞きなれない言葉に耳を傾けながら、僕はゆっくりと疲れを癒していった。

風呂から上がり、休憩所で一休み。外はすでに暗く、風が強い。この風でテントを張るのはやはり困難だ。風呂に入る前、明るいうちにあらかじめ見つけておいたバス停に寝るのが利口だろう。そこはあまりきれいなバス停とは言えないが、この風では仕方ない。
最終のバスが終わる時間を確認したら、荷物を背負い、バス停に足を向けた。

今日の歩行距離約47km。

写真1
朝日が路面を乾かす。風はやんでくれない。

写真2
人は、山あいの小さな平地にも水田を作る。棚田を見るたび、人の生きる力の強さを感じる。

写真3
トンネル内の県境越え。ついに中国地方。

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