2010年3月28日日曜日

歩86日目 山口県山陽小野田市

天候 晴れのち曇り
気温 7時 -1.2度
   16時 11.5度

今朝もまた一段と寒い。寝袋から出るのが一苦労だった。用を足しにテントの外に出ると、まだ明けぬ空に星がいくつも瞬いていた。
「なるほどそういう事か」
凍えた指先を口元で暖めながら、僕はひとり納得した。

5時00分。起床。テントには霜が降りていた。真っ白なテントを見るのは久しぶりだ。温度計を見るとマイナス1度。寒いはずだ。輝く星達に拍手を送りたいくらいの放射冷却だった。

寒い朝は温かいものを食べるに限る。昨日食べきれなかったうどんを茹で、熱々を平らげれば体は中からぽかぽかだ。体が冷えぬうちに撤収作業を開始する。テントのポールがあまりに冷たくて素手では触れない。フライシートには薄い氷が張りついていた。

6時40分。出発。吐く息は目の前で白い塊となった。まさか山口で氷点下の朝を迎えるとは。僕は、寒さに対してすっかり無防備になっていた。

9時00分。小郡に入り、新山口駅付近を通過する。見上げる空には雲ひとつない。遮るもののない陽の光が、余すところ無く地上に降り注ぐ。気温はうなぎ登りで、着けていたネックウォーマーを外した。

10時30分。国道から外れ、車のあまり通らないのどかな県道を歩いていた。田園が広がり、右手には新幹線が走っていた。
前から一台の自転車が来た。荷物を満載だ。それは一目で長旅仕様とわかる。まとう雰囲気が違う。
「こんちは」
「おはようございます」
軽い挨拶ですれ違った。お互いが旅人と認めあった証だ。その時、僕は自転車の荷台に旗がなびいていたのを見つけた。韓国の旗だった。振り返り、過ぎ行く自転車を見た。彼は韓国人だったのだ。きっと釜山から下関あたりに船で入ってきたに違いない。そういえば彼の言った挨拶も、どこか発音が違っていたような気がする。異国の地を自転車で旅するなんて素晴らしい事だ。

11時30分。やがて道は国道2号にぶつかった。そこを右に行けば下関。頭上の標識には北九州と門司の文字。九州はもうすぐそこだ。

16時00分。バイパスとなる国道から外れ、厚狭の市街地に入っていった。食べるものが無く、買い物をしなければならなかった。立ち寄ったスーパーマーケットでパスタとチキンカツとビールを買う。
スーパーマーケットを出ると17時になっていた。これから1時間が勝負だ。それまでには寝床を見つけたい。

17時15分。厚狭川に架かる橋を渡ろうとして、それを見つけた。あずまやだった。ということは公園があるだろう。土手の道を歩き、そこへ近づく。大きくはないが、悪くない公園だった。水場はないが、手持ちの水で一晩くらいなら十分だ。2分考え、テントを張った。この先歩いてどこか見つけられる保証はない。

17時30分。もう寝床ができてしまった。明るい。いつもはすっかり暗くなってからテントを設営している。テントに入るとまずトーチを点けるのだが、今日はそんなもの必要なかった。
それにしても時間を持て余してしまう。何をしていいかわからない。夕食には早すぎるし、とりあえずビールをあけた。

考えてみれば今日で本州最後の夜になる。明日には北九州市に入っていることだろう。ビールを買って正解だったな。明るいテントの中で、僕はひとり乾杯をした。

今日の歩行距離約37km。

写真1
寒い朝。久しぶりにテントが白くなった。

写真2
北九州に門司。本州最後の夜。

4 件のコメント:

  1. いよいよ九州上陸のようで出てきました。
    10号3号どちらのルートを通るのかわかりませんが、佐多岬まであと400km前後ですね。
    読んでいると自分も旅してるような気がします。
    最後の九州編、ムチャせずムリせず楽しんでください。
    もし見かけたら声かけます。
    ありきたりですが、がんばってくださいね。

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  2. 本州お疲れ様でした。

    残すは九州!
    早くゴールしたいような
    ゴールしてしまうのが寂しいような感じですかね?

    もう桜は楽しめましたか?

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  3. kitaQさん

    結局九州は10号を使いました。
    本当は熊本の阿蘇とか通りたかったんですけどね…笑

    九州はいい人ばかりで本当に楽しかったです。

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  4. マミィさん

    桜はいたるところで楽しめましたよ。
    ちょうどいい時期でした。

    雪の北海道からはまさか桜が見られるなんて全然想像できなかったですけどね~

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