2010年3月29日月曜日

歩87日目 福岡県北九州市

天候 晴れ一時雷雨
気温 7時 5.9度
   17時 14.9度

もし、その一歩に強いて意味を持たせるとすれば、それは「終わりと始まり」そういう事になるのだろう。

九州入りした。
ついに長かった(本当に長かった!)本州を抜け出したのだ。

本州と九州は歩いて渡る事が出来る。関門海峡には人道トンネルと呼ばれる長さ780mのトンネルがあり、こちらから向こうへと、人はそこを歩いて抜けるのだ。本州と九州はとても近い。

トンネル内には丁寧にラインが引かれていた。そのラインの手前には「山口県」、向こう側には「福岡県」、そう書いてあった。本州側から歩いてきた僕の場合はそうだった。

そこが県境だ。つまり本州と九州の境でもある。ラインを跨ぐ一歩は、いつもと変わらぬ小さな一歩。でも、そこに意味を求めてしまうのが人間だ。

なぜだろう。

北海道の宗谷岬から、ここまで。幾万という歩みを重ねてきた。それはどれをとっても大切な一歩であり、みな等しくある。どれかひとつでも欠けていれば、今の僕はここに居ない。
始まりの一歩も、峠を登り切った一歩も、転んだ時の一歩も、そしてこのラインを越える一歩も。すべて同じ一歩だ。だから、特別ではない。僕はいつものように足を動かすだけだ。

5時20分。起床。寒くない朝だ。なるほど今日は星が見えない。寝袋からも楽に出られる。

いよいよ今日は九州入りだ。携帯端末から覗く毎朝恒例の天気予報チェックも、今日から九州地方になった。

6時40分。出発。空は薄く雲が張っているが、今日も雨の心配はないだろう。
国道2号を外れ、海沿いへと向かう。坂道を下り切ると国道190号に突き当たり、太平洋が見えた。その先には九州。ついに捕らえた。あれがこの旅の最終ステージだ。

9時30分。下関市に入る。本州最後の市となる、歴史ある町だ。道はまた国道2号へと変わり、国道9号と重複しながら海沿いに進んで行く。だが僕は下関の町中には入らない。そのもっと手前に、僕が入るべき人道トンネルがあるからだ。

13時10分。重複していた国道2号と9号が別れ、海沿いの道は9号となった。出てきた標識には人道トンネルまで6kmと書かれている。あと少し。あと少し。そうつぶやきながら歩いた。道の脇は立ち並ぶ桜の木が、誇らしげに花を付けていた。

14時40分。道はぴたりと海について走るようになった。海を挟んで九州が見える。進むにつれて海の幅が次第に狭まっていき、手を伸ばせば向こう岸に届きそうなくらいだ。
やがて目の前に関門橋が見えた。海を跨ぎ、本州と九州を結んでいる。そしてあの橋の袂に人道トンネルがある。

15時30分。人道トンネルの入り口に到着した。天気の良い日曜とあって観光客も多い。僕もその中のひとりとなり、橋を見ながらランチにした。いつもの様にサンドイッチだったのだけど、九州を目の前に食べるそれはまた格別だった。

食べ終えたらすぐに立ち上がった。今日はここに泊まる訳じゃない。ここはひとつの通過点。僕はまだまだ前に進まなければならない。コーヒーを飲み干しバックパックを背負うと、トンネルへと下るエレベーターに乗り込んだ。

16時00分。ラインを越えた。その瞬間、4thステージが終わり、5thステージが始まった。だけどそれは連続する一歩だった。
昇りのエレベーターから地上に出ると、さっきまでいた本州が海の向こうに見えた。海を越えるというのは不思議な感覚だ。何かが変わったのか。何も変わっていないのか。意味を持たせるのはいつだって人間だ。

門司と言えば九州の玄関口。レトロな建築物が残っており、観光地としとも有名だ。やはりここにもたくさんの観光客がいたが、僕はスーパーマーケットで買い物をしただけで、他は特に気にもせず進んだ。門司には何度か来ていた(九州にバイクで入るには、船を使わなければ必ず門司を通過する事になる)し、まだ明るかったのでもっと前に進みたかったのだ。

九州は国道10号で別府まで行こうと思っている。なのでまず門司からは県道25号だ。そのうち10号に合流する。とにかく行ける所まで行こう。そう思った。

吉志の町に着いたのは、もう19時を過ぎていた。あまり良い寝床が見つからず、歩き続けていたのだ。もうぼちぼち落ち着きたい時間だ。見つけたスーパーマーケットでビールとワインを買い、それを手にぶら下げながら吉志の町をうろついた。

20時30分。暗い町を30分以上さ迷い、やっと不時着した。いい公園を見つけたのだ。あずまやがあった。トイレに水場もあった。迷わずテントを張る。

今日は久しぶりにワインなんかを買ってしまった。本州脱出と九州入りのお祝いのつもりだ。さらに贅沢にもカマンベールチーズなんてものを買っていた。門司のスーパーマーケットで買ったのだ。我ながら安い贅沢だとは思う。しかし久しぶりに食べるチーズはワインに良く合い、とてもうまかった。

今日も狭いテントの中、ひとりで夜を過ごす。北海道だろうが、本州だろうが、九州だろうが。それはこの旅が終わるまでいつだって変わりはない。

今日の歩行距離約43km。(本州30km、九州13km)

写真1
関門海峡を橋が繋ぐ。でも歩きは無理。

写真2
いつもと変わらぬ一歩でありたい。

写真3
これが人道トンネル出入口。歩いて行けるのが良い。

2 件のコメント:

  1. 来ましたねぇ。すごいねぇ。

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  2. 848さん

    ついにだよ!
    やればできるもんです!笑

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